化学の基礎008|単位を式に残し、答えの桁を点検する
単位と有効数字で答えを点検する:L・m³・J・kJ・K
体積36.7 mLの溶液を、0.0367 Lと書き換えました。数字は1000分の1ですが、溶液が減ったわけではありません。同じ量を別の単位で表しているからです。この36.7 mLを使い続けて、濃度の計算と丸めを点検します。

1.36.7 mLをLに直す。分母へmLを置く
m(ミリ)は1000分の1を表す接頭語です。1 mL = 0.001 L、つまり1000 mL = 1 L。この等しい量の比を掛けると、体積を変えずに表し方だけを換えられます。
分子のmLと分母のmLが打ち消され、Lが残ります。分数を逆にするとmL × mL/Lになり、Lだけにはなりません。消したい単位を分母に置くと、掛ける向きを決められます。ここで1000は定義による厳密な換算係数です。
ペンタ数は36.7から0.0367へ小さくなるのに、体積は同じなんだね?
イコールはい。LはmLより1000倍大きい単位なので、同じ体積を表す数値は1000分の1になります。
ペンタじゃあ、0.0367 LからmLへ戻すときは?
イコール(1000 mL / 1 L)を掛けます。Lが打ち消され、36.7 mLへ戻ります。換算の前後で元の量に戻るか確かめられます。
2.m³へ直すときは、立方に注意する
1 Lは1 dm³です。dm(デシメートル)は0.1 mなので、一辺の長さを三方向とも換算すると、
長さが10分の1なら、体積は1000分の1です。1 L = 10−3 m³を使って、さっきと同じ体積を換算します。
この3.67 × 10−5 m³も36.7 mLと同じ体積です。1 mL = 10−6 m³を使い、36.7 × 10−6 = 3.67 × 10−5と直接換算しても一致します。
3.同じ36.7 mLで、濃度の単位を確かめる
溶質の物質量n = 0.01234 mol、溶液全体の体積V = 36.7 mLと与えます。モル濃度はc = n/V。mol/Lで答えるには、前節で得たV = 0.0367 Lを使います。
nをVで割るので、mol/Lが残ります。元の36.7という数字をそのまま使うこともできますが、そのときの単位はmol/mLです。
この数値に単位だけmol/Lを付けると、1000倍小さい濃度になってしまいます。別経路として、同じVのm³表示を使うと、
1 m³ = 1000 Lなので、1 m³あたり336.239… molは、1 Lあたり0.336239… molです。336 mol/m³と0.336 mol/Lは、同じ濃度の表示です。数字だけで大小を比べないようにします。

4.最後に丸める。毎行3桁にしない
入力の0.01234は有効数字4桁(1・2・3・4)、36.7は3桁です。先頭の0は小数点の位置を決めるための数字です。掛け算・割り算では、最も少ない有効数字に合わせるのが入門的な目安なので、濃度を3桁の0.336 mol/Lと報告しました。厳密な換算係数1000は、この桁数を1桁に制限しません。
ただし、3桁にするのは最終的な報告値です。最初のn = 0.01234 molを途中で0.0123 molへ丸めると、計算結果が変わります。

途中丸めの経路は、丸め前の結果どうしで比べると約0.324%小さくなっています。実験の誤差を観測したのではなく、計算途中で情報を捨てた差です。電卓の桁を保持し、最後の答えで丸めます。
ペンタ答えが3桁だから、途中の数字も全部3桁にすると思ってた。
イコール途中で捨てた桁は、後の割り算へ影響します。今回なら0.01234を保ったまま計算し、最後に0.336 mol/Lとします。
ペンタ足し算も、いちばん少ない有効数字の数に合わせる?
イコール足し算・引き算では、桁の位置を見ます。たとえば25.0 mL + 0.34 mL = 25.34 mLなら、0.1 mLの位までとして25.3 mLと報告します。
本記事では、残す桁の次が5以上なら切り上げる四捨五入を使います。有効数字は確かさの簡便な目安です。厳密な不確かさ評価には測定ごとの情報が必要で、桁数だけから機器の精度までは決まりません。
5.温度の値を℃からKへ直す問い
ここからは体積とは別の問いです。25.0 ℃という温度の値を、熱力学的温度Tの単位K(ケルビン)で表します。セルシウス温度をθと書くと、数値の関係は次の式です。
T/Kとθ/℃は、それぞれ指定単位で表した数値です。273.15は定義による厳密な差なので、25.0 ℃の小数1桁に合わせて298.2 Kと報告します。Kには「°」を付けません。
6.温度差を℃からKへ直す問い
今度は25.0 ℃から35.0 ℃へ上がった温度差です。両端の温度をKへ換えてから、後 − 前を計算します。
両方に足した273.15は、引き算で打ち消されます。温度差は10.0 ℃でも10.0 Kでも同じ大きさです。温度差10.0 ℃に273.15を足す必要はありません。「今何℃か」と「何℃変わったか」を、計算する前に分けます。
7.JとkJも、消したい単位を分母へ置く
温度差は熱の計算にも現れます。質量100.0 g、定圧比熱容量4.18 J/(g K)の試料が、前節と同じ10.0 Kだけ温まる例を考えます。圧力は一定、仕事は膨張・収縮によるものだけ、比熱容量はこの区間で一定、相変化なしとして、試料が受け取る熱qを計算します。
cpは定圧比熱容量の記号です。この値は、同じ条件で試料1 gの温度を1 K上げるのに、4.18 Jの熱が必要という意味です。100.0 gを10.0 K温めるので、1 g・1 Kあたりの値に、質量と温度差をそれぞれ掛けます。
gとKが分子・分母で打ち消され、Jが残ります。ここで使うのは温度の値298.15 Kではなく、温度差10.0 Kです。qは試料が受け取る熱を正に取り、同じ条件で冷えるとΔTとqは負になります。
k(キロ)は1000倍なので1 kJ = 1000 J。Jを分母へ置いて換算すると、
4.18 kJは有効数字3桁を明示した表示です。体積の換算と同じく、単位を大きくすると数値は小さくなります。
8.単位・逆算・見積もりで点検する
濃度の計算へ戻りましょう。丸める前の値でcVを計算すると、0.336239782… mol/L × 0.0367 L = 0.01234 molとなり、初めのnに戻ります。約0.012 molを約0.04 Lで割ると約0.3 mol/L、という見積もりとも合います。
次元は、量を長さ・質量・時間・物質量などの基本量の組合せで表すものです。濃度は物質量 ÷ 体積なので、n/Vなら合いますがnVでは合いません。ただしc = 2n/Vも同じ次元になるため、単位が合うだけで式が正しい証明にはなりません。定義・換算係数・大きさも一緒に点検します。
9.自分で確かめる
今回の36.7 mLをLとm³で表してください。どちらへ換算しても有効数字は何桁?
0.0367 L、3.67 × 10−5 m³です。ともに有効数字3桁。厳密な換算係数を使うので、与件の桁数を保ちます。
n = 0.00500 mol、V = 25.0 mLなら、濃度は?
V = 0.0250 L。c = 0.00500/0.0250 = 0.200 mol/L(3桁)。逆算0.200 mol/L × 0.0250 L = 0.00500 molも一致します。
20.0 ℃という温度の値と、20.0 ℃から30.0 ℃への温度差を、それぞれKで表すと?
温度の値は20.0 + 273.15 = 293.15 K、報告値293.2 K。温度差は(303.15 − 293.15) K = 10.0 Kです。
出典と次の学習
単位と接頭語:産総研NMIJ「国際単位系(SI)」、BIPM SI Brochure 第9版 §2.3.1・§3・§5.4.1。リットルの換算:NIST SP 330 §4・表8。有効数字の計算目安:OpenStax Chemistry 2e §1.5。熱と温度差:同 §5.2。次は濃度の変化を時間で割り、反応速度の単位へ進みます。

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