元試料0.6000 gに含まれるMgを、純粋なMg2P2O7として回収すると、秤量値は0.1875 gでした。元試料中のMgは質量で何%でしょうか。量ったのは化合物全体なので、まずそこに含まれるMgの質量へ換算します。
元試料:0.6000 g
空試験補正済みの純粋な秤量形Mg2P2O7:0.1875 g
元試料のMgを定量的に回収した与件
教材用の丸めたモル質量:
M(Mg)=24.30 g/mol
M(P)=31.00 g/mol、M(O)=16.00 g/mol
求める量:元試料中のMg質量%
計算は秤量形のg→秤量形のmol→Mgのmol→Mgのg→元試料に対する%の順です。Mgは約0.04094 gとなり、元試料0.6000 gを分母にして約6.823%と求まります。各換算で、何の量を数えているか追ってみましょう。

1.量った化合物を、元試料のMgへ対応させる条件
重量分析では、組成の決まった化合物の質量から、元試料の分析対象量を求めます。最終的に量る化合物を秤量形と呼びます。今回の秤量形はMg2P2O7、報告する対象は元素Mgです。試料と秤量値は教材用の与件として扱います。
本稿は与えられた秤量形からの計算です。元試料のMgが定量的に回収され、純粋で組成の正しいMg2P2O7になっていることを仮定します。定量回収とは、元試料のMgを失わず計算対象へ移せたという条件です。また、試薬などに由来する余分な質量は、適切な空試験で補正済みとします。
2.Mg₂P₂O₇の1 molは、Mgを2 mol含む
ここでM(X)はXのモル質量です。これらの値をこの問題の与件として統一して使います。この与件では、回収率と純度を前節の仮定どおりとして計算します。
化学式Mg2P2O7の小さい2はMgが二つ分、もう一つの2はPが二つ分、7はOが七つ分という組成比です。固体を孤立した分子として描く必要はなく、式に対応する量1 molにはMgが2 mol含まれるという換算に使います。
Mg2P2O7 1 molの222.60 gのうち、Mgに対応する質量は2×24.30 = 48.60 gです。残りはPとOに対応します。
ペンタ固体が0.1875 gなら、そのままMgが0.1875 gあるの?
イコールそのgにはPとOの質量も含まれています。Mg₂P₂O₇ 1 molの222.60 gのうち、Mgは2 mol分の48.60 gです。
ペンタMgの2 molは、式のMgの後ろにある2から出たんだね?
イコールはい。化合物1 molにつきMgを2 mol数えます。その2を使って、固体の物質量からMgの物質量へ変えます。
3.秤量形のgから、Mgのgへたどる
最初に、秤量した固体の質量をそのモル質量で割ります。式に対応する量1 molが222.60 gなので、0.1875 gがその何mol分かを求める割り算です。この段階の対象はMg2P2O7です。
次に、Mg2P2O7 1 molにつきMgが2 molという比を掛けます。2 mol Mg / 1 mol Mg2P2O7の上側は求めたいMg、下側は今分かっている秤量形です。秤量形のmolが消えてMgのmolになり、最後にMgのモル質量24.30 g/molを掛けるとMgのgへ変わります。

一つの換算係数へまとめるなら、次の比です。分子は「秤量形1 mol中のMgのg」、分母は「秤量形1 molのg」なので、g Mg/g Mg2P2O7という意味を持ちます。g同士は打ち消せますが、対象の名前は残して読めるようにします。
ペンタ途中のmolを省いて、0.1875に24.30/222.60を掛けてもよい?
イコールMgが一つならその比ですが、この秤量形には二つ分あります。2×24.30/222.60を掛けます。2を落とすとMg質量が半分になります。
ペンタ単位はどちらもgに直るのに、係数の間違いは見つからないね。
イコール単位だけでは分かりません。Mg₂P₂O₇ 1 molにMgが2 molという化学式の対応へ戻して、係数の2を検査します。
4.最後の分母は、元試料0.6000 g
定量回収という与件により、ここで求めた0.0409367 gは元試料に含まれていたMgの質量へ対応します。元試料中のMg質量分率は、このMg質量を元試料の全質量で割ります。0.06823…は全体を1とした割合なので、%表示には100を掛けます。

ペンタ割合なら、量った0.1875 gで割る方が自然に見えるけど。
イコールそれで分かるのは、量った固体中のMg割合です。今回の問いは元試料中のMg割合なので、元試料0.6000 gを分母にします。
ペンタ同じMgのgでも、知りたい対象が変わると%が変わるんだね?
イコールそうです。Mg₂P₂O₇中なら約21.83%、元試料中なら約6.823%。分母の名前を付けて、どの全体に対する比か書きます。
5.逆向きの計算で、秤量値へ戻す
桁を丸める前のMg質量を、換算係数で割れば元の秤量値へ戻ります。また、Mgの質量は化合物全体より小さく、この例では元試料の質量よりも小さくなっています。
この逆算は、換算の向きと数値が対応するかの確認です。実試料の回収や純度も同時に証明する操作ではありません。Mgだけを一部失えば、回収した固体から求めたMg量は元の全Mgより小さくなります。また、Mgを含まない不純物や余分な水分の質量を足してしまえば、全てをMg2P2O7として換算したMg量を大きく見積もります。だから、前節までの計算には定量回収・純度・正しい組成・空試験補正済みという条件が必要です。
もう一歩:生成形と秤量形が違う場合
重量分析では、分析対象を沈殿などへ移し、質量からその量を求めます。Mgの教材例には、MgNH4PO4·6H2Oという沈殿から、組成の定まったMg2P2O7を秤量する考え方があります。最初に得る生成形と、最終的に量る秤量形は同じ式とは限りません。報告したいのは、そのどちらの化合物の質量%でもなく、元素Mgの質量%です。

6.対象と分母を選ぶ確認問題
問1 別試料1.200 gから、同じ条件でMg2P2O7を0.1875 g得ました。Mgの質量とMg質量%は主例と同じですか。
問2 Mg質量%が10.00%の元試料0.6000 gなら、同じ定量回収・純粋な秤量形・空試験補正済み条件で、期待されるMg2P2O7の質量は?
答えを作るのは、化学式が示す「秤量形1 molにMg 2 mol」の対応と、元試料の質量という分母です。割る・掛けるモル質量には物質名を付け、最後まで丸める前の数値を使うと、約6.823%まで同じ経路で求められます。
参考資料
生成形と最終秤量形の組成、Mgの形の変換、元素を保存して質量へ換算する考え方は、David Harvey『Analytical Chemistry 2.1』8.2 Precipitation Gravimetry、Composition of the Final Precipitate/Quantitative Calculationsを参照しました。本稿の試料・秤量値と丸めたモル質量は教材用与件で、図と確認問題は独立に計算しています。


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