希釈と混合で何が保存される? 濃度計算を丸暗記しない

ペンタが食塩水へ水を加え、イコールが増える溶液の体積を示している。食塩の容器は横に置いたまま 化学

食塩水に水を足すと、薄くなります。水が増える間、溶けているNa⁺とCl⁻の数は保たれます。同じ量の溶質が、より大きな体積へ広がるので、溶液1 Lあたりの量が小さくなるのです。

ペンタが食塩水へ水を加え、イコールが増える溶液の体積を示している。食塩の容器は横に置いたまま
水を加える希釈では、溶質の量を保ったまま、溶液全体の体積を増やす。

1.希釈前後の、同じ粒子を追う

希釈は、溶液に溶媒を加えて濃度を下げることです。ここではNaCl水溶液に純水を加え、NaClがすべて溶けたままで、反応・沈殿・溶質の損失がない場合を考えます。薄い水溶液中で完全にNa⁺とCl⁻へ分かれるとして、各イオンの数を追います。

水を足す前にNa⁺が4個、Cl⁻が4個ある模式図なら、水を足した後も各4個です。実際の数ははるかに多くても、同じ保存の関係が成り立ちます。この図では、水分子は省いて溶質のイオンだけを示します。

希釈前50.0 mLと希釈後200.0 mLの各容器にNa⁺4個、Cl⁻4個を表示。NaCl0.0100 molは前後同じで、濃度は0.200から0.0500 mol/Lへ変わる
容器と粒子の配置は模式図。青+と赤−をそれぞれ数えると、前後で各4個。
ペンタ

水を足したら、粒子が半分になるわけじゃないんだね。

イコール

Na⁺とCl⁻はそのままです。今の図では、前も後も各4個あります。広がる範囲が大きくなるので、同じ体積あたりの数が減ります。

ペンタ

だったら、溶液が4倍の体積になれば、濃度は4分の1?

イコール

はい。溶質の量が同じで、全体の体積が4倍なら、1 Lあたりの量は4分の1になります。

2.まず「濃度×体積」で溶質のmolを求める

図と同じ例を計算します。0.200 mol/LのNaCl水溶液を50.0 mL用意し、純水を加えてできた溶液全体を200.0 mLにしたとします。

モル濃度は溶液1 Lあたりの溶質のmolです。その値に手元の溶液体積を掛けると、含まれる溶質の量になります。n = cVのcはモル濃度、Vは溶液体積、nは溶質の物質量です。VはLで使います。

希釈前の体積
50.0 mL = 0.0500 L

NaClの物質量 n = cV
= 0.200 mol/L × 0.0500 L
= 0.0100 mol

mol/L × LではLが打ち消し合い、molが残ります。この0.0100 molのNaClに由来するNa⁺とCl⁻が、希釈の後も同じ量ずつ含まれています。

希釈後の体積
200.0 mL = 0.2000 L

希釈後のモル濃度
= 保たれたNaClの物質量希釈後の溶液全体の体積
= 0.0100 mol0.2000 L
= 0.0500 mol/L

最初の濃度0.200 mol/Lの4分の1です。体積は200.0/50.0 = 4倍なので、粒子の図から予想した関係と合います。

ペンタ

200.0 mLは、足した水の量じゃなくて、できあがり全部の量なんだ。

イコール

はい。もとの50.0 mLも含めた、希釈後の溶液全体です。濃度の分母にはその全体を使います。

ペンタ

水を200.0 mL足した場合は、同じ計算にならない?

イコール

最終体積が違います。体積が足し算できると仮定すれば250.0 mLになり、濃度は0.0100 mol ÷ 0.2500 L = 0.0400 mol/Lです。実際の計算には、混合後の最終体積を使います。

3.c₁V₁ = c₂V₂は、同じmolを両側に書いた式

下付きの1は希釈前、2は希釈後を表します。前のNaClの量はc₁V₁、後の量はc₂V₂です。その量が保たれるので、次の式になります。

c1V1 = c2V2

c2 = c1V1V2
= 0.200 mol/L × 0.0500 L0.2000 L
= 0.0500 mol/L

両側とも、濃度を比べているのではなくNaClの物質量を書いています。だから、もとの濃度を使って一度molを求めても、この式を使っても同じ答えになります。

左右の体積が同じ単位なら、c₂ = c₁(V₁/V₂)の体積比だけはmLのまま計算できます。ただしn = cVでmolそのものを求めるときは、mol/Lに合わせてVをLに直します。例えば0.200 × 50.0の数値を、そのまま10.0 molと読むと1000倍の誤りになります。

4.濃さの違う二つの食塩水を混ぜる

希釈では純水を加えました。今度は、NaClが含まれる二つの溶液を混ぜます。どちらもNaClがすべて溶けており、混合後も反応や沈殿がなく、NaClの損失がないとします。

溶液Aは0.100 mol/L、100.0 mL。溶液Bは0.300 mol/L、50.0 mLです。ここでは混合後の体積が150.0 mLになると仮定して計算します。

Aに含まれるNaCl
nA = 0.100 mol/L × 0.1000 L
= 0.0100 mol

Bに含まれるNaCl
nB = 0.300 mol/L × 0.0500 L
= 0.0150 mol

混合後のNaCl
n全体 = 0.0100 + 0.0150
= 0.0250 mol

AとBに含まれる同じNaClを足した後、混合後の溶液全体の体積で割ります。

混合後のモル濃度
= 0.0250 mol0.1500 L
≈ 0.167 mol/L
AのNaCl0.0100 molとBのNaCl0.0150 molを足し0.0250 mol。混合後体積150.0 mLと仮定すると濃度約0.167 mol/L
各溶液のcVを求めてから足す。最後に、混合後の体積で割る。
ペンタ

0.100と0.300の平均だから、0.200 mol/Lじゃないの?

イコール

今回はAが100.0 mL、Bが50.0 mLで、Aを2倍の体積入れています。薄いAの割合が多いので、答えは単純な平均より低い0.167 mol/Lです。

ペンタ

濃度が高いBより低くて、薄いAより高いなら、見当も合うね。

イコール

このように体積の和を使える混合では、結果は二つの濃度の間に入ります。もし0.400 mol/Lなどになれば、molの足し算や分母の体積を見直せます。

5.何が保存される計算か、条件を確かめる

混合後の式は、c混合後 =(cAVA + cBVB)/V混合後です。分母は、混ぜた後の溶液全体の体積。体積の足し算が成り立つと仮定したときに、V混合後をVA + VBで置き換えられます。実際の体積が150.0 mLと違うなら、その最終体積に置き換えて計算します。

また、反応や沈殿によって数える化学種が変わるときは、その変化量を先に調べます。例えばNa⁺を含む溶液同士でも、別の成分が沈殿すれば、液中のその成分の量が変わることがあります。保存する対象と最終体積が分かるところから、濃度の式へ進みます。

6.理解を確かめる3問

① 0.400 mol/LのNaCl水溶液25.0 mLを、全体100.0 mLに希釈した。濃度は?
NaClは失われず、反応・沈殿はないとします。
解答:NaClは0.400 × 0.0250 = 0.0100 mol。これを0.1000 Lで割り、0.100 mol/Lです。体積4倍なので濃度は4分の1です。

② 本文のAとBを、それぞれ50.0 mLずつ混ぜたら?
反応・沈殿・損失がなく、混合後体積を100.0 mLとします。
解答:NaClは0.100 × 0.0500 + 0.300 × 0.0500 = 0.0200 mol。0.1000 Lで割り、0.200 mol/Lです。今回は体積が同じなので単純な平均と一致します。

③ 0.200 mol/Lを、全体の体積が3倍になるように希釈した。0.600 mol/Lでよい?
溶質の量は保たれるとします。
解答:3倍の体積へ同じ量が広がるので、濃度は3分の1です。0.200/3 ≈ 0.0667 mol/L。希釈前より小さくなることでも確かめられます。

参考資料

希釈前後で溶質の量が保たれることと希釈式はOpenStax Chemistry 2e §3.3「Dilution of Solutions」を参照。c = n/Vと混合物全体の体積を使う定義はIUPAC Green Book第3版(2012年第2刷)§2.10、冊子48ページ、注13で確認できます。国内教材のmol/L・mLからmolを求める用語と単位の扱いは啓林館副教材見本「酸・塩基の中和」冊子58ページの量的関係を参照。本文の希釈・混合例と図は独自に作成しました。

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