塩を振ったきゅうりから水が出るのは、なぜでしょう。水が膜を通って移動する浸透と、その正味の移動を止める浸透圧を、液面の変化から考えます。
この記事のゴールは、「何が膜を通るか」「何が増えて液面が上がるか」「最後に何が止まるか」を、同じ容器の図で説明できることです。
1.塩を振った野菜から、膜を通る水へ
野菜の細胞には水や溶けた物質が入っています。外側が濃い食塩水になると、細胞の内側から外側へ水が正味で移り、細胞を内側から押す圧力が弱まります。しんなりする理由の一つが、この水の移動です。
水が流れる現象をすべて浸透と呼ぶわけではありません。ここで見るのは物質の通りやすさが異なる膜を隔てた、水の正味の移動です。実際の細胞膜は水以外の物質も選択的に通すため、「どの膜でも水だけを通す」とは考えません。[細胞膜と浸透の出典]
2.模型では、水だけが通る膜を選ぶ
水の行き先を追うため、野菜の細胞を離れ、中央を膜で仕切った容器に置き換えます。左は純水、右は非電解質の水溶液です。非電解質とは、ここでは水に溶けてもイオンに分かれない溶質のことです。食塩水はイオンを含むので、図の黄丸は食塩の粒子ではありません。
この模型では、膜は水を通し、この溶質を通さないとします。このような選択性を持つ膜を半透膜として使います。温度は一定、初めの液面と両側の外圧は等しく、溶質の漏れや反応、容器外との水の出入りはないとします。この模型では水溶液は薄く、水と水溶液の密度の違いを無視します。

同じ温度で、初めに両側の圧力が等しいとします。溶媒を通し溶質を通さない膜では、溶媒は両方向へ移動しますが、純溶媒側から溶液側への移動が多くなります。この模型の溶媒は水なので、左から右へ移る水の方が多いということです。[純溶媒と溶液を隔てた模型の出典]
ペンタ水は右にしか進めないの?
イコールペンタさん、膜は水にとって一方通行ではありません。右から左へ戻る水もあります。ただ、初めは左から右へ移る量の方が多いので、右の水が増えます。
ペンタじゃあ、図の右向き矢印は何を表すの?
イコール両方向の移動を差し引いた「正味の移動」です。同じ時間に右へ移った水の量から、左へ戻った量を引くと、初めは右向きの増加が残るという意味ですよ。
3.右の液面が上がっても、溶質は増えない

図2の上から下へ、水は左から右へ正味で移ります。左から減った水は右へ加わり、容器全体の水の量は変わりません。右の溶質は膜を通れないので、前後で同じ量が残ります。
右では、同じ量の溶質が、増えた液量の中に入っています。そのため右の水溶液は初めより薄くなります。溶質が減ったから薄まるのではなく、水が増えたから薄まるのです。
ペンタ右の液面が上がったのは、溶質も左から右へ移ったから?
イコールこの膜を通るのは水だけです。左は初めから純水で、溶質はありません。右の黄丸は6個のままなので、右の液量が増えた原因は水の流入です。
ペンタ水が増えて右の濃度が下がるなら、最後は左と同じ濃度になる?
イコール左は純水のまま、右には溶質が残ります。両側の溶質濃度が等しくなるという意味ではありません。液面が変わらなくなる理由は、次に見る圧力差です。
4.液面差ができると、圧力差が流入を抑える
図2の下では、右にたまった液体が高い柱になっています。液体の重さによって、膜の同じ高さで比べた右側の圧力が左側より大きくなり、右へ入る水の正味の移動を抑えます。
液面差によって生じる圧力差が、純溶媒側から溶液側への正味の溶媒移動を抑えます。平衡では、その圧力差が浸透圧に対応します。
平衡で止まるのは、水の正味の移動です。水分子の行き来がすべて止まるわけではありません。右へ移る量と左へ戻る量がつり合うので、液面が変わらなくなります。左は純水、右は溶質を含む水溶液という違いは残ります。
この液面差で生じた圧力差を浸透圧と対応させるなら、右の水が増えた平衡時の濃度を用います。初めの濃度をそのまま使うと、途中で薄まったことを落としてしまいます。
5.液面を上げずに止めるなら、溶液側へ圧力を加える
今度は同じ模型を、初めの等しい液面の状態から考え直します。右の液面が上がるのを待つ代わりに、ピストンなどで右の溶液側へ余分な圧力を加えます。その圧力差を適切な大きさにすると、液面を等しく保ったまま、水の正味の移動を止められます。
浸透圧は、溶液側へ加えて正味の溶媒移動を止めるための圧力です。水が移動する向きそのものを表す力ではありません。純水側の圧力を基準に、溶液側へどれだけ余分に加えるかという圧力差で表します。[浸透圧の定義と圧力の出典]

浸透圧は記号π(パイ)で書き、単位にはPa(パスカル)などを使います。図2で見える高さの差そのものは長さです。浸透圧と対応するのは、それによって生じた圧力差であり、「液面差の長さ=浸透圧」ではありません。[圧力と単位の出典]
ペンタ図2では液面が違うのに止まる。図3の下では同じ液面でも止まる。矛盾しない?
イコールどちらも、右側の圧力を左側より高くして、水の正味の流入を抑えています。図2は高くなった液体の重さ、図3の下は外から加えた圧力で、その差を作るのです。
ペンタでは、どちらも初めの水溶液の浸透圧を表しているの?
イコールそこは分けましょう。図2では水が右へ入って薄まったので、平衡時の水溶液の浸透圧に対応します。図3の下では初めから正味の移動を止めて液量を保つので、初めの水溶液の浸透圧に対応します。
6.同じ模型で、理由まで答えてみよう
左が純水、右が非電解質の水溶液、水だけが膜を通る模型です。図2と図3を見ながら考えてください。
- 図2では右の液面が上がりました。右の溶質の量は増えましたか。図の黄丸で説明してください。
- 図2の下で液面が変わらなくなったとき、「水分子は膜を通らなくなる」「右へ移る量と左へ戻る量がつり合う」のどちらが適切ですか。
- 平衡になった図2で、左と右の溶質濃度は等しいですか。膜を通れないものから理由を説明してください。
- 図2の平衡時と、図3の下で最初から正味の移動を止めた場合。初めの濃度をそのまま使えるのはどちらですか。
解答と、図へ戻る確かめ方
- 増えません。右の黄丸は上も下も6個です。増えたのは膜を通って入った水。左右を合わせた水の量も変わりません。
- 両向きの量がつり合う方です。同じ時間に右へ移る量と左へ戻る量の差が0になり、正味の移動が止まります。
- 等しくありません。溶質は膜を通れないため、左は溶質のない純水、右は溶質を含む水溶液のままです。圧力差ができても、この違いは消えません。
- 図3の下です。初めから正味の移動を止め、右の液量を保つので初めの濃度に対応します。図2では右へ水が増えて薄まっているため、平衡時の濃度を使います。
まとめ
この模型で膜を通るのは水だけです。初めは両向きの移動に差があり、右へ水が増えて液面が上がります。右の溶質量は変わりません。液面差で圧力差が生まれると、水の両向きの移動がつり合い、正味の移動が止まります。
浸透圧は、その正味の移動を止めるために溶液側へ余分に加える圧力差です。液面が変わらないこと、水分子が動かないこと、両側の溶質濃度が等しいことは、同じ意味ではありません。
関連:沸点上昇と凝固点降下
出典
- OpenStax Chemistry 2e, 11.4:溶媒の両方向移動、液面上昇、圧力差と浸透圧。
- OpenStax Biology 2e, 5.2:細胞膜の選択性と、外液による細胞の水分変化。
- OpenStax College Physics 2e, 11.3:圧力の意味とPa。


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