【分かりやすく】溶解度積とは「解説」

分析化学
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今回の記事は溶解度積とは何か、沈殿平衡について解説していきます!

溶液内の平衡反応に関するお話が続きますね。よろしければ他の記事もご参考ください!
(【詳しく解説】緩衝溶液とは?原理をマスター、【詳しく解説】電離度の求め方・弱酸は本当に電離しにくいのか?)

溶解度積とは

まず初めに、溶解度積とは何かを説明していきます。

溶解度積Kspは、難溶性の塩の溶解平衡を表す定数です。沈殿する方向かどうかは、その時点のイオン積を、同じ条件のKspと比べて判断します。

イオンって沈殿するの!?と思った方もいるかもしれませんが、塩化ナトリウムや塩酸のように溶けやすい物質ばかりではありません。溶解度積は、ほんのわずかな濃度のイオンでも沈殿が生成する物質(塩)に適用されることが多いです。

以下で具体例を見ていきましょう。

塩化銀の溶解度積・沈殿生成

塩化銀(AgCl)を例にとって具体例を挙げて考えていきます。

AgClは難溶性の塩です。水溶液中のAg+とCl−が少量だからといって、必ず沈殿するわけではありません。式(1)で、AgClは固体、Ag+とCl−は水中のイオンとして考えます。

固体AgClと溶液が平衡にあるとき、溶解度積は式(2)で表されます。aは、標準状態に対する無次元の活量です。純固体AgClの活量を1として扱うため、固体の濃度を分母へ入れません。

式(2):Ksp = a(Ag+) × a(Cl−)

薄い溶液で活量係数をおよそ1とみなせるとき、イオンの活量は濃度を標準濃度c°=1 mol/Lで割った値に近似できます。平衡での式(2)は式(3)のように書けます。

式(3):平衡では Ksp ≈ ([Ag+]/c°) × ([Cl−]/c°)

式(4)のQspは、その時点の溶液から計算するイオン積です。以下で[Ag+][Cl−]と書く式では、mol/Lで表した濃度の数値を掛け、標準濃度で割る操作を省略しています。固体AgClの濃度が常に飽和しているから省く、という意味ではありません。

式(4):Qsp = a(Ag+) × a(Cl−) ≈ ([Ag+]/c°) × ([Cl−]/c°)

QspとKspを比べます。固体AgClと共存して平衡にあるときはQsp=Kspです。Ksp自体は、その時点で増減するイオン濃度の積と区別します。

以下でそれぞれの場合を解説していきます。

Ksp ≧ [Ag+][Cl–]の場合

式(5)のうちQsp<Kspなら不飽和で、新たにAgClが析出する方向には進みません。Qsp=Kspは飽和に対応し、固体と共存する平衡では正味の変化がありません。

不飽和の溶液に固体AgClがあれば、溶ける方向が有利です。固体がすべて溶けてなくなると、不飽和のままになることもあります。固体の濃度を一定とする仮定が崩れるから沈殿しない、という理由ではありません。

Ksp < [Ag+][Cl–]の場合

式(6)のようにQsp>Kspなら過飽和で、AgClが析出する方向が熱力学的に有利です。

析出すると溶液中のAg+とCl−が減り、固体が残って平衡に達したときQsp=Kspとなります。添加前の各イオン濃度へ戻るとは限りません。また、結晶ができ始めるまでの時間や析出の速さは、この大小関係とは別の問題です。

いまのイオン積と、係数の意味を確かめよう

底に残る固体と溶液を比べる場面です。沈殿の判断には、溶液のイオン積Qspと同じ条件のKspを用います。
底に残る固体と溶液を比べる場面です。沈殿の判断には、溶液のイオン積Qspと同じ条件のKspを用います。
ペンタ

AgClが難溶性なら、少しイオンがあるだけで沈殿するの?

イコール

まず今のQspを、同じ温度・溶媒・活量基準のKspと比べます。Qspが小さければ、新しい沈殿ができる方向ではありません。大きければ析出が有利ですが、何秒で見えるかまでは分かりません。

ペンタ

固体が残っていないのに、QspをKspと同じにしてよい?

イコール

不飽和のまま全て溶けた試料には、その等式を強制しません。固体と共存する平衡ならQsp=Kspです。

上のAgClとは別に、式の係数を読むための仮想の塩MX2を考えます。M2+とX−の塩で、他からこれらのイオンを加えず、水に溶かして純固体が残る平衡です。錯形成などの副反応を無視し、活量係数を約1、標準濃度をc°=1 mol/Lとします。

モル溶解度sは、溶けた塩の物質量を溶液の体積で割った値です。MX2が1 mol溶けるとMは1 mol、Xは2 molできるので、[M2+]=s、[X−]=2sです。さらに溶解反応のXの係数2は、活量の指数2にもなります。

上は1:1の塩、下は1:2の塩です。MX₂では、濃度の2sと指数2を両方使います。sとc°の単位はmol/Lで、s/c°は無次元です。
上は1:1の塩、下は1:2の塩です。MX₂では、濃度の2sと指数2を両方使います。sとc°の単位はmol/Lで、s/c°は無次元です。

したがってKsp ≈ (s/c°)(2s/c°)2=4(s/c°)3。仮にこの塩のKspを4.00×10−12と与えると、s=1.00×10−4 mol/L、Xの濃度はその2倍の2.00×10−4 mol/Lです。これは係数を確認する模型の値で、AgClの実測定数ではありません。

ペンタ

係数2だから、Kspはsの2乗で終わり?

イコール

Mのsも一つ掛けます。Xの項は(2s)2なので4s2、Mのsを掛けて4s3になります。何が2倍で、何を2乗するかを分けましょう。

補足の定義確認:OpenStax:溶解度積と溶解反応の係数。数値は独自の仮想例です。

まとめ

今回の記事では、溶解度積・沈殿平衡について解説しました。

このAgClの例では、イオン積Qspと同じ条件のKspを比べます。Qsp>Kspなら沈殿が生成する方向、Qsp<Kspなら新たな沈殿は生成せず、固体があれば溶ける方向です。Qsp=Kspは飽和に対応し、固体と共存する平衡では正味の変化がありません。濃度式は活量係数をおよそ1とみなす近似です。

いかがでしたか?最後までご覧いただきありがとうございました!

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