水分子H2Oには、O–Hの結合が2本あります。では、Oの周りにある電子は何個で、水分子全体では何個でしょうか? 同じ図なのに答えが違う理由を、共有結合とルイス構造から考えます。

1.共有結合と、ルイス構造の線・点
共有結合は、原子どうしが電子を共有することでできる結合です。ここでは、共有する電子を2個一組の「電子対」で表すルイス構造を使います。ルイス構造で描くのは、主に結合に関わる外側の電子である価電子です。原子にあるすべての電子を描く図ではありません。
結合を表す線1本は、共有電子対1組=電子2個を表します。結合に使われず、一つの原子に置いて描く電子対を非共有電子対(孤立電子対)といい、点2個で表します。点1個は電子1個です。
共有する電子対は、1組とは限らない
共有する電子対が1組なら単結合、2組なら二重結合、3組なら三重結合です。線が増えると、同じ2原子の間で共有する電子の数も増えます。



2.一問を解く:水の8電子をどこに置く?
問題:H2Oの価電子を数え、O–Hの線2本と非共有電子対を使ってルイス構造を完成させましょう。O原子の価電子は6個、H原子は1個として考えます。
- 使える電子を先に数える。Oが1原子、Hが2原子なので、6 + 1 × 2 = 8個です。この8個を、線と点に振り分けます。
- H–O–Hを線2本でつなぐ。線1本は電子2個だから、結合に使うのは2 × 2 = 4個です。
- 残る電子を点にする。8 − 4 = 4個が残ります。Oの非共有電子対2組として描けば、線に4個、点に4個、全体8個がそろいます。

全体で8個でも、Oの周りにも8個ある
今度は、それぞれの原子の周りだけを見ます。Hは線1本の電子2個を共有しています。Oは線2本の電子4個と、自分の非共有電子4個を合わせて8個です。各原子の周りを確かめるときは、共有電子対を両方の原子に含めます。

ペンタHの周りは2個ずつ、Oの周りは8個。足すと12個だけど、電子が増えたの?
イコール各原子の周りを見るときは、同じ共有電子対を両方の原子で数えます。分子全体では一度だけ数えるので、線2本で4個、点4個で4個、合計8個です。
ペンタ電子対を1組忘れた図に足りない2個を、Hとのもう1本の結合に使ってもいい?
イコールHは今の単結合で周りの2個がそろっています。残る2個をOの非共有電子対に置くと、Hは2個、Oは8個となり、全体8個も一致します。
3.オクテット則は、どこで役立つ?
水のOでは、共有電子も含めて周りが8個になりました。C・N・Oなどの原子を含む多くの分子で、このように周りの価電子を8個にそろえる考え方が役立ちます。これをオクテット則といいます。Hの周りは8個ではなく2個で考えます。
先ほどのO2なら、O一つの周りは共有4個+非共有4個=8個。N2なら、N一つの周りは共有6個+非共有2個=8個です。一方で、すべての分子に8個を一律に当てはめることはできません。まず全体の価電子数を保ち、そのうえで原子ごとの数を確認します。
4.もう一歩:オゾンの18電子と共鳴
酸素分子O2と違い、オゾンO3はOが3原子あります。ここでも先に、分子全体で使える価電子を6 × 3 = 18個と数えます。O–O–Oというつながりをもとに配置してみましょう。
- 単結合2本に4個を使い、残りは18 − 4 = 14個。
- 両端のOの周りを8個にするため、非共有電子を6個ずつ置くと12個を使います。残る2個は中央のOに置きます。
- ここまでで全体18個ですが、中央のOの周りは結合の4個+非共有の2個=6個です。
- そこで、片端のOの非共有電子対1組を、中央との共有電子対に置き直して描きます。電子を足すのではありません。片側が二重結合となり、中央は共有6個+非共有2個=8個になります。
二重結合にした端のOも、共有4個+非共有4個=8個。単結合の端は共有2個+非共有6個=8個です。全体では線3本の6個+点12個=18個のままです。
図の+と−は、どう決める?
このルイス構造では、共有電子対を半分ずつ各原子に割り当てて、電子数の収支を確かめます。非共有電子は、そのまま置かれた原子に割り当てます。Oのもとの価電子6個との差を形式電荷といいます。
二重結合の端のOは、非共有4個+結合から半分の2個=6個なので、6 − 6 = 0。中央は2+3=5個の割り当てで、6 − 5 = +1。単結合の端は6+1=7個で、6 − 7 = −1です。合計は0+1−1=0となり、中性のO3と一致します。この+/−は構造を点検するための形式的な数で、実際の原子の電荷そのものを表す値ではありません。

2つの図は、分子が行き来する2状態?
AとBは同じ原子のつながりで、電子対の配置を別々に描いた共鳴構造です。実際のO3はAとBの間を交互に変化するわけではありません。電子は両側の結合に広がっていて、一方だけを固定した図では十分に表せません。
オゾンの2本のO–O結合は等価で、いずれも約128 pmです。単結合と二重結合を1本ずつ固定した1つのルイス構造だけでは、実際の結合を十分に表せません。これは中性O3の実験構造データに対応する値です。pmは長さの単位で、1 pm=10−12 mです。
ペンタ図に単結合と二重結合があるなら、片方のO–Oだけ長くなるの?
イコールそれは一つのルイス構造だけで考えた予想です。実際のO₃では2本は等価で、どちらも約128 pmです。左右を入れ替えたAとBの両方で、電子の広がりを表します。
ペンタなら、結合が交互に入れ替わって、時間で平均すると同じ長さになる?
イコール交互に切り替わるという意味ではありません。実際の電子の分布を、AだけでもBだけでも十分に描けないということです。図の線や結合長を算術平均する計算ではなく、同じ分子を複数の書き方で表すのが共鳴です。
5.自分で確かめる
① 水:H–O–Hの線2本と、Oの点2個しかない図には、価電子が何個描かれていますか? あと何個を、どこへ置けばよいでしょうか?
② 酸素分子:O2で共有電子が4個、各Oの非共有電子が4個ずつなら、分子全体とO一つの周りは、それぞれ何個でしょうか?
③ 発展・オゾン:二重結合の向きを左右で入れ替えると、全体の18電子や、中性であることは変わるでしょうか?
答えと数え方
① 線2本 × 2個+点2個=6個。全体8個にするには、あと2個をOの非共有電子対として置きます。Hに結合を足すと、Hの周りを2個にする条件が崩れます。
② 全体は共有4個+非共有4個×2=12個。O一つの周りは共有4個+自分の非共有4個=8個です。原子ごとに8+8と足すと、共有の4個を重複して含みます。
③ 変わりません。線3本に6個、点に12個で合計18個。中央の形式電荷は+1、単結合側の端は−1、二重結合側の端は0で、左右が入れ替わっても合計0です。
まとめ
- ルイス構造では、線1本は共有電子2個、点1個は電子1個です。非共有電子対は点2個で表します。
- 全体の価電子数を先に求めて線と点へ振り分け、全体では各電子を一度だけ数えます。各原子の周りでは、共有電子を双方に含めます。
- 水の全体は8個、Hの周りは2個ずつ、Oの周りは8個。オクテット則は役立つ目安ですが、全分子共通の規則ではありません。
- O₃は全体18個。共鳴構造は同じ分子の電子配置を複数の図で表したもので、分子が図の間を行き来することではありません。
根拠を確かめる資料
- OpenStax Chemistry 2e 7.3:Lewis Symbols and Structures:価電子、電子対の表記、構造の組み立て、オクテット則の適用と例外を確認できます。
- OpenStax Chemistry 2e 7.4:Formal Charges and Resonance:形式電荷の数え方と、共鳴構造間を分子が往復するのではない点を確認できます。
- NIST CCCBDB:中性O₃の実験データ:Geometric Dataに2本のO–O距離1.278 Åを掲載。記載された電子状態は¹A₁、構造の対称性はC₂vです。1 Å=100 pmなので127.8 pm、約128 pmとなります。別分子の単結合長と二重結合長を平均して求めた値ではありません。
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