反応物の濃度が、20秒では0.0640 mol/L、30秒では0.0490 mol/Lになりました。この10秒間に、1秒あたり平均でどれだけ減ったのでしょう。さらに、20秒のすぐ近くでは、どんな減り方をしているのでしょう。この二つを分けて読む道具が、微分です。

1.まず、10秒間の平均を求める
濃度をc、時間をtと書きます。濃度の単位はmol/L、時間の単位はs(秒)です。ここでは液量が一定で、溶液の出入りがない反応を考えます。数値と曲線は、減り方を学ぶためのモデルです。
後の濃度から前の濃度を引くと、0.0490 − 0.0640 = −0.0150 mol/L。10秒間で濃度が0.0150 mol/L減ったので、符号はマイナスです。それを10秒で割ります。
Δ(デルタ)は「二つの値の差」です。ΔcとΔtは、どちらも後の値から前の値を引きます。この答えは、この10秒間では、平均して1秒あたり0.00150 mol/L減ったという意味です。各秒に同じ量ずつ減った、とまでは分かりません。

ペンタ10秒分をまとめて割ったんだね。じゃあ、20秒ちょうどの減り方も−0.00150なの?
イコールそれはまだ分かりません。図の曲線は、進むほど緩やかになっています。20秒の近くを知るために、20秒から21秒までの1秒間を見てみましょう。
2.1秒間、0.1秒間へ、区間を短くする
同じ曲線で、21秒の濃度は0.06241 mol/Lです。20秒から21秒の平均は、次のようになります。
10秒間の−0.00150より、少し負の側に大きくなりました。減少の大きさで比べれば、20秒に近いところの方が、平均より速く減っています。さらに20秒から20.1秒では、濃度が0.0640000から0.0638401 mol/Lへ下がり、平均変化率は−0.001599 mol/(L s)です。

このモデルでは、区間をさらに短くすると−0.001600 mol/(L s)に近づきます。時間幅を0に近づけたとき、平均変化率が近づく値を、その時刻での「瞬間変化率」または「微分係数」と呼びます。
ペンタ時間を0秒にしたら、変化も0じゃない? どうして傾きが残るの?
イコール0秒で割るのではありません。0ではない短い時間について「濃度の差÷時間幅」を計算し、その値がどこへ近づくかを見ます。この例なら、幅を短くするほど−0.001600に近づきます。
ペンタ「瞬間」は時間の単位が消えるって意味じゃないんだね。
イコールはい。短い時間あたりの変化率なので、単位は平均と同じmol/(L s)です。
3.接線の傾きが「今の減り方」を表す
二点を結ぶ割線で、後の点を始点へ近づけていくと、直線はその時刻での接線へ近づきます。接線は、曲線のその場所での傾きを持つ直線です。

接線の傾きで、20秒から1秒後の濃度を予測してみます。
曲線の値0.06241 mol/Lとの差は0.00001 mol/Lです。近くなら、接線でよく近似できています。しかし10秒先まで同じ傾きを伸ばすと予測は0.0480 mol/L、曲線は0.0490 mol/L。接線は、その時刻の近くの変化を表すもので、曲線全体を一本の直線に替えるわけではありません。
瞬間変化率を、記号ではdc/dtと書きます。「濃度cを、時間tについて微分した量」と読みます。定義を式にすると、次の形です。
c(t)は「時刻tでの濃度」、c(t+h)は「そこからh秒後の濃度」です。hは時間幅、limh→0は「hを0へ近づけたときの値」を表します。h ≠ 0で割り算をしてから、0へ近づけます。この極限が存在する部分で、接線の傾きが定まります。微分係数の定義:OpenStax Calculus §3.1。
4.同じ濃度なら、同じ速さ?
今度は、20秒でどちらも0.0640 mol/Lになる二つのモデルを比べます。Aは1秒あたり0.00160 mol/L、Bは0.00080 mol/Lずつ減る直線です。図は10〜30秒の範囲だけの比較です。

ペンタ同じ濃度なのに、Aの方が速く減るんだね。濃度だけで速さは決まらないの?
イコール反応によります。温度や触媒、ほかの成分の濃度なども関係します。「同じ濃度なら同じ速さ」といえるかは、反応の速度式と条件を確かめる必要があります。この図だけから、その反応の仕組みは決まりません。
5.濃度が下がったら、必ず反応した?
最初の例では、液量が一定で溶液の出入りがない、という条件を置きました。その条件を変えたら、濃度の傾きの意味も見直します。
ペンタ水を足して薄くしたときも、濃度のグラフは下がるよね。それも反応の速さなの?
イコール水を足して薄くなっただけなら、成分が反応で減ったとはいえません。濃度は「物質量÷体積」です。成分が0.010 molのまま、体積が0.10 Lから0.20 Lになれば、濃度は0.10から0.050 mol/Lへ下がります。
ペンタじゃあ、傾きを反応の速さとして読む前に、液量や出入りを見るんだね。
イコールそうです。濃度が変わったことと、反応で成分が消費されたことは、条件を確かめて結び付けます。
反応物の濃度の傾きdc/dtは減少なら負です。一方、消費の速さを正で表すときは−dc/dtを使います。20秒の例なら、傾きは−0.00160、消費の速さは+0.00160 mol/(L s)。何を表した符号かを先に確認します。
ペンタ消費の速さを正にすれば、それが反応全体の速さになる?
イコール反応式の係数もそろえます。一定体積で2A → Bだけが進み、出入りがなければ、Aが2 mol減る間にBが1 mol増えます。したがって反応全体の速度rは、r = −(1/2)dcA/dt = dcB/dtです。Aの消費速度が0.00160なら、rは0.00080 mol/(L s)になります。
係数で割るのは、どの成分から読んでも同じ反応速度にそろえるためです。反応式の係数と速度:OpenStax Chemistry §12.1。
6.測定の間隔は、短ければ短いほどよい?
ペンタ本物の測定でも、どんどん短い時間で引き算すれば、瞬間の速さに近づく?
イコール滑らかなモデルの計算と、測定値の差は分けます。例えば濃度の差に0.001 mol/Lのずれが入ると、10秒で割った傾きへの影響は0.0001 mol/(L s)。0.1秒で割れば0.01 mol/(L s)です。同じずれでも、短い時間で割るほど大きく響きます。
区間を短くするだけでは、測定が正確になるとは限りません。濃度をどの精度で測れたか、時間間隔はいくらか、点と点の間をどんな曲線で表したかも確認します。
7.本文だけで確かめる
問1:濃度が10秒で0.0800から0.0600 mol/Lへ変わりました。平均変化率はいくらですか。それだけで、始点の瞬間変化率も決まりますか。
答え:(0.0600 − 0.0800)/10 = −0.00200 mol/(L s)。10秒間の平均です。途中が直線だという条件がなければ、始点の瞬間変化率は決まりません。
問2:同じ時刻に同じ濃度を通る二つの曲線は、同じdc/dtを持ちますか。
答え:同じとは限りません。濃度は点の高さ、dc/dtはその場所の傾きです。図4のAとBは高さが同じでも傾きが違います。
問3:成分の物質量を変えず、体積を2倍にしたら濃度は半分になりました。「半分が反応した」といえますか。
答え:いえません。濃度=物質量÷体積なので、体積が増えたための減少です。反応による消費と判断するには、液量や出入りも確認します。
使った曲線の式と、−0.00160の確かめ方
図1〜3と区間の計算には、0〜100秒の範囲でc(t) = c₀(1 − t/τ)²、c₀ = 0.100 mol/L、τ = 100 sを使いました。t/τは時間÷時間なので単位を持ちません。例えば20秒なら、c = 0.100 × (1 − 20/100)² = 0.0640 mol/Lです。100秒より後の部分は、この消費過程のモデルに使いません。
20秒からh秒後の濃度はc₀(0.8 − h/τ)²。20秒の濃度c₀ × 0.8²を引き、h ≠ 0で割ると次になります。
hを0へ近づけると、最後の項が0へ近づきます。残る−1.6 × (0.100 mol/L)/(100 s) = −0.00160 mol/(L s)が接線の傾きです。平均から極限を取った値と、図の近くの変化が一致します。
次は、電流のような「1秒あたりの量」を時間に沿って足し、全体の量を求める積分へ進みます。


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