【詳しく解説】安定度定数とは「逐次安定度定数・全安定度定数」

分析化学

今回の記事では安定度定数とは何かについて解説していきます。

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安定度定数とは

早速、安定度定数とは何かについて説明していきます。
安定度定数とは言葉の通り「安定性」を表す定数です。何の「安定性」を表すのかというと、一般的には錯体の水溶液中における「安定性」を表す言葉です。
また、安定度定数は「錯生成定数」と呼ばれることもあります。

以下では、錯体に当てはめて安定度定数を解説していきます。

金属と配位子が1:1で錯形成する場合

ある金属Mと配位子Lの1:1錯体を考えた時、水溶液中において反応式は式(1)の様になります。

ここで、平衡定数(K)は式(2)の様に表されます。

安定度定数(K)が大きければ大きいほど、錯体の安定性が大きいことを示しています。
つまり、安定度定数がより大きいという事は金属と配位子がより強く結合していることを示します。

安定度定数は数値が大きいため、一般的には log10K で表されることが多いです。

金属に対して配位子が2つ以上結合する場合

全安定度定数

次に、金属Mと配位子Lが1:n(n≧2)で錯形成をする場合を考えてみましょう。

ここでは、テトラアンミン銅(II)錯体([Cu(NH3)4]2+)を例にとって考えていきます。
この錯体は、金属としてCu2+が1つ、配位子としてNH3が4つからなる錯体であり、水溶液中では以下の全反応式(3)で存在しています。

ここで、安定度定数(β)は式(4)の様に表されます。

金属1つに対して配位子が複数個付く場合は安定度定数はβとして表すことが多いです。この場合、平衡定数を「全安定度定数」と呼ぶことが多いです。

なぜ「全安定度定数」と呼ぶのかというと、反応式(3)は実際には複数の反応を一つにまとめたものであるからです。
以下で詳しく説明していきます。

逐次安定度定数

の全反応式(3)を細かく分割すると、式(5)~式(8)の様に表されます。

それぞれの反応における安定度定数は式(9)~(12)で表すことができ、これらを逐次安定度定数(K1K4)と呼びます。

このように、金属1つに対して複数の配位子が結合する場合、全反応式は複数の逐次反応式に分割することができます。全安定度定数は複数の逐次安定度定数に分割されます。

また、逐次安定度定数の積は全安定度定数になります。
式(8)~(12)の左辺の積は式(4)の左辺と一致すると思うのでぜひ確かめてください。(右辺の積も一致します。)

まとめ

今回の記事では、安定度定数とは何かについて解説しました。

まとめると
・安定度定数とは錯体の水溶液中における「安定性」を表す言葉。
・1つの金属に対して複数の配位子が結合する場合、全安定度定数として表される。
・全安定度定数は逐次安定度定数に分割され、逐次安定度定数の積が全安定度定数になる。

いかがでしたか?最後までご覧頂きありがとうございました!

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