同じ組成の一価イオンに塩素Clが二個あります。軽い35Clと重い37Clの存在比を3:1と近似したとき、M・M+2・M+4の相対強度はいくつになるでしょうか。
二つのCl位置で四通りを数え、同じ質量へ来る二通りを足すと、M:M+2:M+4=9:6:1です。真ん中の6は、軽い/重いと重い/軽いの両方を数えた結果です。まず組合せを図で追い、最後に2pqという式へ戻して検算します。
対象:Cl二原子を含む、同じ組成の一価イオン(電荷数z = +1)。
軽い35Clの確率p = 3/4、重い37Clの確率q = 1/4。
二つのCl位置で独立に同位体を選ぶ模型。他元素の同位体寄与と、組合せ間の検出効率の違いを無視する。
整数質量の近似を使い、同位体ピークの位置と相対強度を求める。
1.Cl一個を選ぶ確率を、二つの位置へ使う
Clには質量数35の35Clと、質量数37の37Clという二つの主要な同位体があります。どちらもCl原子ですが、核に含まれる中性子の数が異なります。ここでは軽い35Cl:重い37Clの存在比を3:1と近似し、各位置の確率を3/4と1/4にします。
二つのCl位置の同位体は、この確率で独立に選ばれるものとします。他元素の同位体による寄与は無視し、同位体組合せによる検出効率の違いもないとするので、組合せの割合が相対強度を与えます。この近似の中でCl二個の寄与だけを取り出します。
組成にClが二個あるという条件であり、塩素分子Cl2そのものの実測スペクトルではありません。炭素・水素など残りの組成は共通に固定して比べます。絶対質量を指定しなくても、Clの置換による質量差と組合せの割合は求められます。
2.四通りを数え、同じ質量の二通りを足す
Clの二つの位置をAとBと名付け、Aの確率とBの確率を掛けます。ここでは二個とも軽い組合せの位置をM、重いCl一個の位置をM+2、重いCl二個の位置をM+4と呼びます。横軸の差は次節で計算します。このラベルは組合せを漏れなく数えるための区別です。軽いClがAかBかという違いが、質量差を変えるわけではありません。

M+2の二通りを足します。3/16+3/16=6/16です。Aが軽い/Bが重いと、Aが重い/Bが軽いを一つずつ数えたので、中央には混合の組合せ数2が付きます。どちらもCl原子二個、電荷数+1のままです。

ペンタ重いClが一個なら3/16だから、9:3:1でよい?
イコールAが重い場合とBが重い場合を両方数えます。同じM+2に各3/16が入るので、中央は6/16です。9:3:1だと片方を取り落としています。
ペンタ中央の6は、二通りをまとめた数なんだね。三本を足せば全部に戻る?
イコール9/16+6/16+1/16=1です。比だけでなく全体への割合も計算すると、混合を落とした誤答を見つけられます。
A軽い・B軽い:p×p = p² = 9/16。
A軽い・B重い:p×q = 3/16。
A重い・B軽い:q×p = 3/16。
A重い・B重い:q×q = q² = 1/16。
同じ質量の混合を足す:pq+qp = 2pq = 6/16。
全組合せ:p²+2pq+q² = (p+q)² = 1。
数の比で同じ検算をするなら、(3+1)2=32+2×3×1+12=9+6+1です。分母は42=16。式の中央の2は、図1の混合カード二枚に対応します。
3.質量を足し、一価のM・M+2・M+4へ対応させる
Mは、前節で数えた二個とも35Clである最も軽い組合せのピークです。ここではm/zを、イオンの整数質量(原子の質量数を足した値)を電荷数の絶対値|z|で割った横軸として読みます。精密な質量ではなく、整数の近似で数える模型です。
実際の同位体の質量差は整数2に厳密に等しいわけではありません。M+2やM+4は、この整数差に基づくクラスターの呼び方です。また、M+2は「二価になったイオン」という意味ではなく、同じ一価イオンの重い組合せの位置を表します。
ペンタM+2の2を、電荷が+2という意味で読んでしまいそう。
イコール今回はどの組合せも電荷数+1です。2は軽い組合せMからの横軸の差で、Clが一個だけ重い同位体へ替わったためです。
ペンタ二個とも重いClなら、電荷を変えずにさらに2ずれる?
イコールはい。同じ一価のまま質量差が合計4になり、M+4の位置へ来ます。何個が重いClかと、電荷数とを別々に数えます。
重いCl 0個:M、割合9/16。
重いCl 1個:M+2、割合3/16+3/16 = 6/16。
重いCl 2個:M+4、割合1/16。
相対強度:9:6:1。合計割合:(9+6+1)/16 = 1。
4.同じ9:6:1を、割合とピーク強度へ換算する
三ピークの合計を100%とするなら、Mは56.25%、M+2は37.50%、M+4は6.25%です。一方、最も高いMの強度を100にそろえる表示なら、M+2は100×6/9≈66.7、M+4は100×1/9≈11.1になります。こちらの数は、三本の合計が100%になる割合ではありません。

同じ整数近似でも、もし電荷数の絶対値が2なら、質量差2は横軸の差2/2=1になります。したがって「2間隔だからCl一個」という推論の前に、電荷数と同位体寄与の条件をそろえる必要があります。本例の9:6:1は、二個のClという候補を支持する近似であり、残りの元素を含む完全な分子式の決定ではありません。
5.演習:検出個数と、Br一個の近似へ戻す
問1 この模型のクラスターだけに属する検出イオンが合計16,000個なら、M、M+2、M+4にはそれぞれ何個を期待しますか。Mを100とする表示ではM+2はいくつですか。
問2 別の一価イオンがBrを一個持ち、軽いBrと重いBrの比を1:1、質量数の差を2と近似すると、二つのピークの相対強度と間隔は? 他元素同位体は引き続き無視します。
参考資料
Clの主要同位体の約3:1と、一価イオンのM/M+2の対応、Brのほぼ1:1はOpenStax Organic Chemistry 12.3, Halidesを参照しました。Cl二個の組合せ、正規化の比較、棒図、理解確認はこの教材模型について独立計算しました。

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