コップの水を秤に載せれば、何gあるかは分かります。その中の水分子は、何個あるのでしょう。小さすぎて一つずつ数えられない分子の数と、秤で量れる質量をつなぐのがmol(モル)です。

1.水分子をひとまとまりにして数える
まず、水を表すH₂Oを見ます。水1分子にはH原子が2個、O原子が1個あります。水分子が3個なら、H原子は6個、O原子は3個。水分子を数えるのか、その中の原子を数えるのかで、答えが変わります。
化学では、原子や分子などの数に対応する量を物質量と呼び、単位にmolを使います。水分子1 molは、水分子を厳密に6.022 140 76 × 1023個含む量です。およそ6.022 × 1023個という、たいへん大きな数です。1023は1の後ろに0が23個続く数を表します。
1ダースが12個という数え方に似ています。水分子でも酸素分子でも、1 molに含まれる分子の数は同じです。ただし、分子1個の質量が違うので、1 molの質量まで同じにはなりません。
ペンタ水分子が1 molなら、中のH原子も1 mol?
イコールH₂Oの1分子にH原子が2個あるので、H原子は2 molです。O原子は1分子に1個なので1 molになります。
ペンタ水を分解しなくても、分子の中の原子を数えていいんだね。
イコールはい。数え方を変えただけです。水分子1 molの中にあるH原子とO原子を、それぞれ数えています。
次の図は、水分子3個で数の関係を見てから、水分子0.1000 molへ広げています。H原子は水分子の2倍、O原子は水分子と同じ量です。

2.1 molあたりの質量が、モル質量
水1 molの質量は、約18.02 gです。この1 molあたりの質量をモル質量といい、水では約18.02 g/molと表します。g/molは「1 molあたり何gか」という意味です。ここからの水の計算は、この近似値を使います。
純粋な水が1.802 gあるとします。1 mol分の18.02 gに比べて10分の1なので、水分子の物質量も0.1 molになりそうです。全体の質量が、1 mol分の質量の何倍かを割り算で求めます。
= 水の質量 ÷ 水のモル質量
= 1.802 g ÷(18.02 g/mol)
= 0.1000 mol
この関係を記号で書くと、n = m/Mです。小文字のmは質量、大文字のMはモル質量、nは物質量を表します。gをg/molで割ると、g × mol/gになり、gが打ち消し合ってmolが残ります。
ペンタ18.02を掛けるか、割るか、迷っちゃう。
イコール今は何mol分あるかを求めるので、1 mol分の質量で割ります。1.802 gは18.02 gより小さいですから、答えも1 molより小さくなります。
ペンタ0.1000 molからgへ戻すなら、今度は掛ける?
イコールはい。0.1000 mol × 18.02 g/mol = 1.802 gです。物質量に1 molあたりの質量を掛ければ、全体の質量へ戻せます。
0.1000 molの末尾の0は、この例の数値に合わせて有効数字を4桁で表すためのものです。値としては0.1 molと同じです。
3.0.1000 molは、何個の水分子?
1 molに対応する数が決まっているので、0.1000 molに対応する数はその10分の1です。この換算に使うのがアボガドロ定数 NAです。
水分子の数 N = n × NA
= 0.1000 mol × NA
≈ 6.022 × 1022個
Nは、指定した対象の数です。mol−1は「1/mol」、つまりmolあたりを表し、物質量が負という意味ではありません。mol × mol−1では単位が打ち消し合い、数が残ります。ここでは読みやすく「個」を付けています。
定数NAの値は定義で厳密に決まっています。答えを約6.022 × 1022個としたのは、水の質量と採用したモル質量に合わせ、4桁で丸めたからです。

ペンタ1 molでは10の23乗だったのに、今は22乗。どうして?
イコール0.1を掛けて10分の1にしたからです。10の23乗を10で割ると10の22乗になります。
ペンタ分子の数から戻るときは、NAで割ればmolになるんだね?
イコールはい。N/n = NAという対応なので、n = N/NAです。そこへ水のモル質量を掛ければ、水の質量へ戻れます。
同じ純粋な水なら、質量を半分の0.9010 gにすると、水分子の物質量も半分の0.05000 mol、数も約3.011 × 1022個です。モル質量は変わらず、試料の量に合わせてmolと数が変わります。
4.食塩のNaClは、分子として数える?
水では、まとまりとして存在するH₂O分子を数えました。一方、食塩の主成分塩化ナトリウム(NaCl)の結晶では、Na⁺とCl⁻が繰り返し並んでいます。NaClは独立した分子の中身ではなく、Na⁺とCl⁻の数が1:1であることを示す式です。
NaClの式に対応する数え方の単位を式単位と呼びます。例えばNa⁺が4個、Cl⁻が4個なら、NaClの式単位4個分に当たります。結晶の中に、独立したNaClのペアが4組あると決める意味ではありません。
純粋なNaClを5.844 g量ったとします。NaClのモル質量は58.44 g/molとして計算します。水とは1 molあたりの質量が違っても、計算の順序は同じです。
= 5.844 g ÷(58.44 g/mol)
= 0.1000 mol
式単位に対応する数
= 0.1000 mol × NA
≈ 6.022 × 1022個
Na⁺とCl⁻が1:1なので、結晶に含まれるNa⁺の数もCl⁻の数も、それぞれ約6.022 × 1022個です。水1.802 gとNaCl 5.844 gでは、質量は違いますが、水分子の数とNaClの式単位に対応する数がそろっています。
5.水に溶かした後は、イオンを数える
このNaCl 0.1000 molを十分な水にすべて溶かしたとします。薄い水溶液中で、NaClが完全にNa⁺とCl⁻へ分かれるとして数えると、Na⁺が0.1000 mol、Cl⁻も0.1000 molです。溶かす前後でNaとClそれぞれの数は保たれます。

ペンタ二つを足すと0.2000 mol。入れた食塩が2倍になったの?
イコール0.2000 molは、Na⁺とCl⁻を合わせたイオンの物質量です。入れたNaClは0.1000 molで、そこからNa⁺とCl⁻が同じ量ずつ生じています。
ペンタ水分子の数と、その中のH原子の数を分けたのと同じで、何を数えたかを書かないと混ざるね。
イコールはい。「NaClの式単位」「Na⁺」「Cl⁻」「両方を合わせたイオン」を書き分けると、数が2倍になる理由も分かります。
Na⁺の+とCl⁻の−は電荷の符号です。それぞれが同じ数あるので、全体の電荷は打ち消し合います。物質量はどちらも正の0.1000 molです。
市販の食塩など、NaCl以外の成分を含む試料では、n = m/MのmにNaClそのものの質量を使います。また、同じ0.1000 molを少量の水に溶かすか大量の水に溶かすかで、溶液の濃さは変わります。molで含まれる量を求めた後、溶液全体の量と比べるのが濃度です。
6.理解を確かめる3問
① 水分子0.2500 molの中に、H原子とO原子は何molある?
水分子は壊さず、その中の原子を数えます。
解答:H原子は0.2500 × 2 = 0.5000 mol、O原子は0.2500 molです。水分子の物質量は0.2500 molのままです。
② 純粋なNaCl 2.922 gの物質量と、式単位に対応する数は?
モル質量58.44 g/mol、NA = 6.022 140 76 × 1023 mol−1を使ってください。
解答:2.922 ÷ 58.44 = 0.05000 mol。これにNAを掛けて、約3.011 × 1022個です。本文の5.844 gの半分なので、molと数も半分になります。
③ NaCl 0.05000 molをすべて溶かしたら、イオンの合計は?
薄い水溶液中で完全にNa⁺とCl⁻へ分かれるとして、各イオンと合計の物質量を求めてください。
解答:Na⁺が0.05000 mol、Cl⁻も0.05000 mol。両方を合わせたイオンは0.1000 molです。合計は入れたNaClの物質量ではなく、二種類のイオンを合わせて数えた値です。
参考資料
モルの定義と数える対象は、BIPM「mole」と、国内の説明である産総研NMIJ「物質量:モル」を参照。
モル質量とNaClの組成の説明はOpenStax Chemistry 2e §3.1を参照。採用したモル質量はCIAAWの2024年略記原子量表のH 1.0080、O 15.999、Na 22.990、Cl 35.45をもとにした近似値です。水は2 × 1.0080 + 15.999から18.02 g/mol、NaClは22.990 + 35.45から58.44 g/molとしています。


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