AからBとCができるとき、生成している途中と平衡に達した状態では、BとCの内訳をどの情報から求めるでしょうか。次の二つの条件について、B+Cの中の割合と、それぞれの物質量まで求めます。
A→B、A→Cは並行一次反応。A1個からBまたはCを1個生じ、ほかの生成物はなく、体積は一定。初期B=C=0です。
kB=0.0400 s−1、kC=0.0100 s−1。初期Aは0.500 mmolで、この時点までに0.100 mmolがBまたはCへ変わりました。
平衡の問:298 KでB⇌Cの平衡に達した状態
理想希薄模型で、ΔG°B→C=−4.00 kJ/mol。比較のため、B+Cの総量を同じ0.100 mmolとします。
生成の問ではB80.0%・C20.0%、量はB0.0800 mmol・C0.0200 mmolです。平衡の問ではB約16.60%・C約83.40%、量はB約0.01660 mmol・C約0.08340 mmolです。両方で分母をB+Cにそろえ、生成の速さと平衡の比が、それぞれどの条件へ答えるかを確かめます。

1.障壁の高さと、生成物の自由エネルギー差
A→BとA→Cの道が並ぶとします。反応の通り道にある自由エネルギーの障壁は、生成する速さに関わります。一方、BとCの標準自由エネルギーG°の差は、平衡での比に関わります。通る山の高さと、到着点同士の高さの差は別の情報です。

前因子は、障壁に関係する指数項に掛かる係数です。同じ温度・同じ前因子で比べれば、低い障壁の道ほど速くなります。ただし速度定数だけから、障壁の絶対的な高さまで決まるわけではありません。ここからの数値計算には、直接与えた速度定数とB→CのΔG°を別々に使います。
2.生成の観測時点:速度比から量と内訳を求める
初めにBもCもなく、A→BとA→Cが並行して進む一次反応を考えます。逆反応とほかの生成物を無視できる期間に限り、速度はvB = kB[A]、vC = kC[A]です。与件はkB = 0.0400 s−1、kC = 0.0100 s−1。共通の[A]を掛けるので、できる速さの比は4対1です。
初めにB = C = 0、共通の[A]から生成するので、
[B]/[C] = 4、[B]/([B]+[C])= kB/(kB+kC)
= 0.0400/(0.0400+0.0100)= 0.800 = 80.0%
速度比から生成量の比へ進めるのは、同じ[A]を使う並行反応が続き、初期B/Cが0だからです。各瞬間にBがCの4倍ずつ増えれば、その積み重ねも4対1になります。体積を一定とすれば、濃度比は物質量の比と同じです。kの単位s⁻¹は割り算で消え、生成物の割合には単位がありません。B+Cがまだ0の出発時そのものでは、この割合は定義しません。
この観測時点では、Aが0.100 mmol変わり、各A1個からBまたはCを1個生じるので、生成物B+Cの量は0.100 mmolです。4対1の全体は5なので、Bは4/5、Cは1/5を受け取ります。
nC = 0.100 mmol × 1/(4+1) = 0.0200 mmol
検算:0.0800+0.0200 = 0.100 mmol、B/C = 4.00
初期Aは0.500 mmolだったので、残るAは0.400 mmolです。A+B+Cも0.400+0.0800+0.0200=0.500 mmolで与件に戻ります。Bの生成物中の割合は0.0800/0.100=80.0%ですが、Bになった量を初期Aで割ると0.0800/0.500=16.0%です。Aの転化率は0.100/0.500=20.0%。どの量で割るかで、答える問いが変わります。
ペンタBが80%なら、Aの80%がBになったと読める?
イコールこの80%の分母はB+Cです。まだ残るAを含めた初期量ではありません。Aがどこまで反応したかという転化率は、生成物の内訳とは別の量です。
ペンタAが少ししか減っていなくても、できたBとCの中では80対20になるんだね?
イコールそうです。この並行一次反応と初期B/Cが0という条件では、どの時刻も同じ比で増えます。逆反応が効き始めたら、この式をそのまま延長することはできません。
3.298 Kの平衡状態:自由エネルギー差から内訳を求める
平衡の問では、B⇌Cの相互変換が進み、298 Kで平衡に達した状態を考えます。B→Cの標準自由エネルギー変化をΔG° = G°C−G°B = −4.00 kJ/molと与えます。Cの標準自由エネルギーがBより低い、という符号です。同じ標準状態を用いる理想希薄模型では、活量の比を濃度の比に置き換え、平衡定数K = [C]/[B]と扱います。
ΔG° = −RT ln Kを使います。R = 8.314 J mol⁻¹ K⁻¹、T = 298 Kです。lnは自然対数、expはその逆の指数関数です。RのJに合わせて−4.00 kJ/molを−4000 J/molに直します。ΔG°とRTはともにJ/molなので、指数の中には単位が残りません。
= exp{−(−4000)/(8.314×298)}
≈ 5.025 = [C]/[B]
[C]/([B]+[C])= K/(1+K)
≈ 5.025/(1+5.025)≈ 0.8340 = 83.40%

平衡定数を使う理由は、平衡に達したときのC/Bを標準自由エネルギー差から求められるからです。KはCをBだけで割った比なので、Cの割合にするには分母へBとCの両方を入れます。今回のB+C総量0.100 mmolへ、この割合を掛けます。
nB = 0.100 mmol × 1/(1+K) ≈ 0.01660 mmol
検算:nB+nC = 0.100 mmol、nC/nB ≈ 5.025
丸める前のKをΔG°=−RT ln Kへ戻すと、−4000 J/molで与件と一致します。ΔG°が負なので、−ΔG°/(RT)は正、Kは1より大きく、Cの方が多くなります。Kと割合は無次元なので、割合に総量mmolを掛けると物質量mmolへ戻ります。
ペンタ生成の問ではBの方が速くできるのに、平衡の問ではCの方が多いの?
イコール比べている情報が違います。生成の観測時点の内訳はAからできる速さの比4対1です。平衡の内訳はBとCのG°の差からC/B約5.025です。速く到着することと、平衡で多く存在することは同じではありません。
ペンタそれなら長く待てば、必ずCが83.40%になる?
イコールBとCが相互に変化して平衡へ達することが必要です。逆反応を無視した最初の模型にはその過程を入れていません。Kは達した後の比を教えますが、そこまでの速さや時間は教えません。
4.同じ分母で、二つの答えを並べる
生成の問では、逆反応を無視できる期間にAが0.100 mmol変わった時点の内訳を答えました。平衡の問では、298 KでBとCの相互変換が平衡に達した状態の内訳を答えました。同じB+C総量0.100 mmolへ戻すと、二つの割合を量として比較できます。


| 問い | 使う与件 | この模型の答え |
|---|---|---|
| 逆反応を無視できる生成物内訳 | kB/kC = 4 | B80.0%、C20.0% |
| 298 Kでの平衡の生成物内訳 | ΔG°B→C = −4.00 kJ/mol | B約16.60%、C約83.40% |
| 平衡まで何秒か | B/C相互変換の速度情報が必要 | 今回の与件では決まらない |
| 平衡でAがどれだけ残るか | Aと生成物の平衡情報が必要 | 今回の与件では決まらない |
測定した内訳と比べるには、生成を追っている観測時点か、平衡に達した状態かを確認します。生成の式には、初期B/Cが0で、逆反応とほかの生成物を無視できる期間という条件が必要です。平衡の式には、指定温度でB/C相互変換が平衡へ達することが必要です。低温・高温という名前だけで、どちらの式を選ぶかは決まりません。
5.自分で確かめる:内訳が同じなら支配も同じ?
別の並行一次反応で、初期B/Cは0、逆反応を無視でき、kB = 0.0150 s⁻¹、kC = 0.0450 s⁻¹です。①生成物B+Cの中でCは何%ですか。別途、298 KのB⇌C平衡でK = [C]/[B] = 3.00と与えます。②平衡でのCの割合とΔG°B→Cを求めてください。③内訳が一致したことだけから、最初の模型が平衡に達していると判断できますか。
解答 ①Cの割合は0.0450/(0.0150+0.0450)= 0.750、75.0%。②K/(1+K)= 3/4 = 0.750、75.0%。ΔG° = −8.314×298×ln 3 ≈ −2722 J/mol = −2.72 kJ/mol。③内訳の数値が同じでも、それだけでは平衡を証明できません。①は逆反応を無視する生成の比、②は平衡に達したときの比で、成立する条件が違います。


コメント