積分は何を足している? 電流グラフから電気量を求める

充電を考えながら小さな時間の札を並べるペンタと、積み重ねを指すイコール 化学
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電流が0.2 A流れているとき、1秒間に通る電気量は0.2 Cです。それが10秒続けば2 C。では、途中で電流が変わるときは、何を足せばよいのでしょう。積分は、短い時間ごとの電気量を足し、全体を求める道具です。

充電を考えながら小さな時間の札を並べるペンタと、積み重ねを指すイコール
短い時間に通った電気量を、一つずつ積み重ねて考えます。

1.電流と電気量は、どこが違う?

電流は、決めた場所を電荷が通る速さを表します。記号はI、単位はA(アンペア)です。そこで一定時間に通った電荷の量を、この記事では電気量Qと呼び、単位をC(クーロン)で表します。

1 A = 1 C/s
1 Aの電流が1秒続く → 1 C
0.2 Aの電流が1秒続く → 0.2 C

つまりAは「1秒あたりの量」、Cは「その時間に通った量」です。IとQは量の記号、AとCは単位の記号なので、役割を分けて読みます。まずは電流が同じ向きに流れる場合を考えます。電流の定義:OpenStax University Physics §9.1、A・s=Cの単位関係:BIPM SI文書 表4。

ペンタ

0.2 Aという表示は、もう0.2 C通ったってこと?

イコール

「1秒あたり0.2 Cの速さで通る」という意味です。どれだけ通ったかには、時間が必要です。同じ0.2 Aでも、1秒なら0.2 C、10秒なら2 Cになります。

2.1秒分ずつ足してみる

電気量を計算するモデルとして、4秒間を1秒ごとに区切ります。各区間の電流は一定で、順に0.1、0.2、0.3、0.2 Aと与えます。

0〜1秒:0.1 A × 1 s = 0.1 C
1〜2秒:0.2 A × 1 s = 0.2 C
2〜3秒:0.3 A × 1 s = 0.3 C
3〜4秒:0.2 A × 1 s = 0.2 C
合計:Q = 0.1 + 0.2 + 0.3 + 0.2
= 0.8 C

電流の数字だけを足すのではなく、各区間の電流×その区間の時間を足します。今回は幅が全部1秒なので簡単ですが、2秒続く区間なら、その区間には2秒を掛けます。

1秒幅の四つの帯。高さ0.1、0.2、0.3、0.2 Aに1秒を掛けた寄与の合計は0.8 C
一つの帯の高さは電流、横幅は時間。帯一つの面積が、その1秒間の電気量です。
ペンタ

面積を足すと電気量になるのは、どうして?

イコール

高さがA、幅がsだからです。A × s = Cになります。図に描いた長方形は、さっきの「電流×時間」を見える形にしたものです。紙の面積のcm²を電気量へ変える、という意味ではありません。

3.同じ最大電流でも、面積は違う

最大電流0.200 A、全体の時間20秒をそろえ、二つの場合を比べます。Aは0.200 Aが20秒続く長方形。Bは0から直線的に増え、10秒で0.200 A、20秒で0へ直線的に戻る三角形です。

20秒間0.200 Aの長方形は4.00 C。20秒幅で最大0.200 Aの三角形は2.00 C
上は長方形、下は三角形。最大の高さと全時間が同じでも、下には低い電流の時間があります。
Aの電気量:Q = 0.200 A × 20 s
= 4.00 C
Bの電気量:Q = (1/2) × 20 s × 0.200 A
= 2.00 C

Bの面積はAの半分です。最大値の0.200 Aだけを見て20秒を掛けると、Bも4.00 Cになってしまいます。それは、低い電流だった時間まで最大値として数えたことになります。

ペンタ

最大値が同じでも、ずっと流れた方が多いんだね。三角形の時間ごとの足し算も、2.00 Cになる?

イコール

なります。次はBを5秒ずつに分けて、短い区間を足す計算で確かめましょう。

4.変わる電流を、台形で足す

Bの三角形で、0、5、10、15、20秒の電流は順に0、0.100、0.200、0.100、0 Aです。点の間も直線で変わる、という同じ条件を使います。最初の0〜5秒では、電流が0から0.100 Aへまっすぐ増えます。

0〜5秒で0から0.100 Aへ直線的に増える部分。両端の平均0.0500 Aを5秒分数えると0.250 C
最初の部分は片側の高さが0なので三角形です。台形の式で計算しても、同じ面積になります。
平均の電流 = (0 + 0.100)/2
= 0.0500 A
0〜5秒の電気量
= 0.0500 A × 5 s = 0.250 C

なぜ両端の平均が使えるのでしょう。直線で変わるなら、小さい高さと大きい高さを組にすると、その平均はどこでも両端の平均になります。その高さの長方形へ替えると、同じ面積です。直線でない場合には、両端の平均で求めた面積は一般に近似になります。

0〜5秒:(0 + 0.100)/2 × 5 = 0.250 C
5〜10秒:(0.100 + 0.200)/2 × 5
= 0.750 C
10〜15秒:(0.200 + 0.100)/2 × 5
= 0.750 C
15〜20秒:(0.100 + 0)/2 × 5
= 0.250 C
合計:0.250 + 0.750 + 0.750 + 0.250
= 2.00 C

三角形全体の計算と、4区間を足す計算が一致しました。両端の高さの平均×幅を使う方法を台形法といいます。この例では各区間が直線なので、近似誤差がありません。

ペンタ

0秒と5秒の電流を測れば、その間の電気量もぴったり分かる?

イコール

点の間も直線だという条件が必要です。途中に山が隠れていれば、両端だけでは分かりません。測定値から台形法で求めた値は、点の間を直線で近似した結果として読みます。

5.細かく足すことを、積分で書く

短い区間の間では電流がほぼ一定と考えられるなら、その区間の電気量は「電流×短い時間」で近似できます。時間幅をΔtと書けば、IΔtです。それをすべての区間について足します。

Q ≈ I₁Δt₁ + I₂Δt₂ + I₃Δt₃ + …

右下の数字は区間の番号です。例えばI₂は2番目の区間の電流、Δt₂はその区間の時間幅です。各項の単位はA × s=Cなので、和もCになります。

曲線を十分細かく分けて、この和が近づく値を定積分と呼びます。0秒から20秒までなら、次のように書きます。ここで扱う電流は、区間ごとに滑らか、または有限回切り替わる、積分できるモデルです。

Q = ∫0 s20 s I(t) dt

∫は細かい寄与を足す記号です。下の0 sが始まり、上の20 sが終わり。I(t)は「時刻tの電流」、dtは「時間方向に細かく足す」ことを表します。この式は、今までの帯の足し算を、曲線でも表せるようにしたものです。定積分と細かい和:OpenStax Calculus §5.2。

ペンタ

積分って、毎回難しい公式を使わないといけない?

イコール

形が長方形や三角形なら、図形の面積で求めて大丈夫です。曲線なら、細かい長方形や台形で近似する方法もあります。どれも「短い時間に通った量を足す」という同じ考え方です。

6.電流が逆向きなら、どう足す?

ここからは、電流の向きも含めて考えます。測定する場所と電流の正方向を一つ決め、途中で変えません。その正方向に電流が流れれば正、反対なら負です。電流の向きは、正電荷が動く向きの約束で、金属中の電子の移動方向とは逆になります。

0〜10秒は+0.200 A、10〜20秒は−0.100 Aの設定です。10秒で瞬時に切り替わるモデルを使います。前半と後半を、それぞれ電流×時間で求めましょう。

正方向を右向きと決めた電流。前半10秒は+0.200 Aで+2.00 C、後半10秒は−0.100 Aで−1.00 C。正味+1.00 C、大きさの積算3.00 C
横軸より上の寄与は正、下の寄与は負。負の側も、電流が流れた時間です。
前半:(+0.200 A) × 10 s = +2.00 C
後半:(−0.100 A) × 10 s = −1.00 C
正味の電気量 Qnet
= +2.00 − 1.00
= +1.00 C

netは「差し引き」という意味です。正の向きへの寄与が、負の向きへの寄与より1.00 C多かった、と読めます。積分では、負の電流の寄与は負として足されます。

ペンタ

答えは1.00 Cでも、前半に2.00 C、後半に1.00 Cの分が流れたんだよね?

イコール

はい。向きを無視して電流の大きさを積算するなら、2.00 + 1.00 = 3.00 Cです。正味の電気量と、電流の大きさの積算は、別の問いへの答えになります。

ペンタ

正味が0 Cのときも、何も流れなかったとは限らない?

イコール

例えば+0.100 Aが10秒、−0.100 Aが10秒なら、+1.00 Cと−1.00 Cで正味0 Cです。でも電流の大きさの積算は2.00 C。打ち消しが起きたのか、ずっと電流0だったのかは、時間ごとの電流を見て区別します。

電流の大きさは|I(t)|と書けます。縦線は絶対値の記号です。したがって、正味は∫I(t)dt、大きさの積算は∫|I(t)|dt。ここでの積算は、測定した電流から求める量であり、同時に動く個々の荷電粒子の運動をすべて数えた量ではありません。符号付きの面積と絶対値:OpenStax Calculus §5.2。

7.答えの大きさと単位を確かめる

正の電流だけで、最大0.200 A、時間20秒なら、電気量は0〜4.00 Cの間です。20秒全部を最大値で数えた4.00 Cが上限になります。三角形の2.00 Cは、この範囲に入っています。

単位も確かめます。電流Aと時間sを掛ければC。時間が分で与えられていたら、秒へ直してからCを求めます。例えば0.200 Aが1分なら、0.200 × 60 = 12.0 Cです。

充電表示のAh・Whは、Cとどう違う?

Ah(アンペア時)も電流×時間なので、電気量の単位です。1時間=3600秒より、1 Ah = 3600 C。mは1000分の1を表すので、1 mAh = 3.6 Cです。この換算はAhとCの単位関係です。電池から取り出せる量は、測定条件によって変わります。

ペンタ

Whも充電表示で見るけど、同じ電気量?

イコール

Whはエネルギーの単位です。電気量だけではエネルギーは決まらず、電圧も必要です。例えば一定の電圧Uを仮定できるなら、エネルギーはUQ。電流グラフの面積からまず分かるのは電気量です。

電圧が変わる場合のエネルギーや、電気量から生成物の量を求める条件は、後の電気化学で扱います。

8.本文だけで確かめる

問1:0.100 Aが3秒、続いて0.200 Aが2秒流れました。各区間で電流が一定なら、合計の電気量はいくらですか。

答え:0.100 × 3 + 0.200 × 2 = 0.300 + 0.400 = 0.700 C。電流に、それぞれの時間を掛けてから足します。

問2:5秒の間に、電流が0.100から0.300 Aへ直線的に増えました。電気量を求めてください。

答え:両端の平均は(0.100 + 0.300)/2 = 0.200 A。0.200 × 5 = 1.00 Cです。直線で変わるという条件から、台形の面積が使えます。

問3:0秒と10秒の電流がどちらも0 Aでした。この二点だけで、電気量0 Cと判断できますか。

答え:できません。途中に電流の山があった可能性があります。「その間も電流がずっと0」という条件なら0 Cです。

問4:正味の電気量が0 Cでした。全時間で電流が0だったといえますか。

答え:いえません。正と負の寄与が打ち消した可能性があります。時間ごとの電流や、その大きさの積算を確認します。

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