反応の「今の速さ」が分かったら、10秒後に反応物はどれだけ残るでしょう。反応速度式を積分すると、濃度と時間を結ぶ積分形の速度式を作れます。
今回は初速度から二次反応と判定した同じ例で、速度定数を求め、10秒後のA・Bの濃度を計算します。最後に時刻を逆算し、濃度の和と速度の符号で答えを確かめましょう。前提となる変化量の読み方は反応速度の説明で扱っています。
1.Aが減る速さと、Bが増える速さ
反応をA → Bとします。係数は1対1なので、Aが1 mol減るとBが1 molできます。A、Bは説明用の仮想物質で、途中の別反応や逆反応は無視できる範囲を考えます。
閉じた一定体積の溶液、一定温度で、よく混ざった各物質の濃度を追います。初めのBは0、速度定数kは一定とし、考える時間・濃度範囲でv=k[A]nが成り立つ模型です。次数nは実験から決め、反応式の係数だけからnを決めるものではありません。
[A]はAの濃度(mol/L)です。時間tは秒、d[A]/dtはその時刻での濃度の変化率。Aは減るのでd[A]/dtは負になり、消費する速さを正で表すために負号を付けます。Bは増えるのでd[B]/dtは正です。
Aの消費速度:v=−d[A]/dt
Bの生成速度:d[B]/dt=v
よって、v=−d[A]/dt=d[B]/dt=k[A]n
この等号は、一定体積でA → Bだけが進み、係数が1対1だから使えます。係数が違う反応へ移るときには、消費速度・生成速度と、係数でそろえた反応速度を区別します。ここでは全てのkを、上のAの消費速度vに対応させます。[速度と係数の出典]
![AからBへだけ変化する場合、Bの生成速度v_bはk[A]のn乗。](http://chemchemc.com/wp-content/uploads/2026/10/chem-supplement-203-2ba8d06c5c69-03-B-generation-corrected.png)
2.濃度2倍・初速度4倍から、nとkを求める

二つの実験は、同じ反応の途中の二時刻ではありません。温度・溶媒・他の条件をそろえ、初めの[A]だけを変えた別々の実験です。両方とも初めの[B]=0とし、同じkとnを使えるとします。説明用の仮想データを使います。
[A]0は初めの濃度、v0は反応開始時の瞬間の速度です。長い時間区間の平均速度とは分けます。

v0,2/v0,1=k[A]0,2n/(k[A]0,1n)
4=2n → n=2
両実験で同じkを使うため、比を取るとkが消えます。2の2乗は4なので、Aに関して二次の模型です。[初速度法と次数の出典]
ペンタAの前の係数は1なのに、Aの2乗にしてよいの?
イコール係数1は、Aが減る量とBができる量の対応です。次数nは、Aの濃度を変えたとき速度が何倍になるかを表します。図では濃度2倍に対して速度4倍なので、2の2乗に対応する二次です。
ペンタ図のどちらか一つの実験だけで、nを決められる?
イコールkも分からないなら、v0と[A]0が一組だけでは分けて決められません。同じ条件の二組の比を取り、(実験2の初速度)/(実験1の初速度)={(実験2の初濃度)/(実験1の初濃度)}nとして、同じkを消して比較します。
n=2が分かったので、実験1をv0=k[A]02へ戻し、kを求めます。
k=v0/[A]02
=0.00100 mol/(L·s) ÷ (0.0100 mol/L)2
=10.0 L/(mol·s)
単位も、mol/(L·s)を(mol/L)2で割るとL/(mol·s)になります。実験2へ戻すと、10.0×(0.0200)2=0.00400 mol/(L·s)となり、もう一方の初速度も再現します。
3.同じ速度式を積分して、濃度と時間を結ぶ
ここからは、実験1の試料をそのまま進めたときを考えます。初濃度[A]0=0.0100 mol/L、k=10.0 L/(mol·s)です。初速度だけの二つの数値で途中の挙動まで実証したわけではありません。先ほど指定した範囲で二次の速度式と一定のkが続いて成り立つ、として計算します。
知りたい時刻tでの濃度を[A]tと書きます。「添字0は初め」「添字tは求めたい時刻」です。消費速度の定義を使うと、濃度そのものの減り方は次の式になります。
v=−d[A]/dt=k[A]2
よって d[A]/dt=−k[A]2
変数を分けると d[A]/[A]2=−k dt
初めから時刻tまで、この変化を積み重ねます。積分の中では濃度をC、時間をτと書いて、上限の時刻tと区別します。左は濃度[A]0から[A]tまで、右は時間0からtまでです。濃度はこの範囲で正とします。
∫[A]₀[A](t) (1/C2) dC=−k ∫0t dτ
−1/[A]t + 1/[A]0=−kt
両辺に−1を掛けると
1/[A]t=1/[A]0+kt
C−2の積分は−1/Cです。上限の値から下限の値を引くので、左辺は−1/[A]t+1/[A]0となります。最初の−kを保って計算すると、最後は濃度の逆数が時間とともに増える形になります。
[A]t=1/(1/[A]0+kt)
=[A]0/(1+k[A]0t)
これがこの二次反応の積分形の速度式です。1/[A]の単位はL/mol。ktもL/(mol·s)×s=L/molなので足せます。下の形ではk[A]0tが無次元になり、1と足せることも確認できます。[積分形の出典]

ペンタ積分した式は、1/[A]が増えると言っているね。Aは減っているはずでは?
イコール正の濃度の逆数は、濃度が小さくなるほど大きくなります。kが正なら1/[A]0+ktが増えるので、それを逆数に戻した[A]tは減ります。
ペンタもし途中で負号を落とすと、どう気付ける?
イコールtが増えてもAが増える式になったり、分母が0になったりします。今回はAを消費する模型なので、t=0で初濃度に戻ることと、t>0で0<[A]t≤[A]0になることを確かめましょう。
4.10秒後のAとBを計算する
t=10.0 sを、今導いた同じ式へ入れます。
1/[A]10=1/(0.0100 mol/L)
+10.0 L/(mol·s)×10.0 s
=100 L/mol+100 L/mol=200 L/mol
[A]10=1/(200 L/mol)=0.00500 mol/L
10秒後にAは初めの半分になります。Bは初めに0で、Aが減った量と同じだけ増えるので、濃度も求められます。
[B]t=[A]0−[A]t
[B]10=0.0100−0.00500=0.00500 mol/L
確認:[A]10+[B]10=0.0100 mol/L
一定体積でA → Bだけが進むこの模型では、[A]+[B]は初めの[A]のままです。濃度の和が保存するのは、係数1対1と一定体積という条件があるからです。別の係数や、体積が変わる反応へそのまま使いません。
![AからBへだけ進む場合、d[B]/dtはk[A]のn乗。](http://chemchemc.com/wp-content/uploads/2026/10/chem-supplement-203-9ed2e0337780-05-B-generation-corrected.png)
| 時間/s | [A]/(mol/L) | [B]/(mol/L) |
|---|---|---|
| 0 | 0.0100 | 0 |
| 10.0 | 0.00500 | 0.00500 |
| 20.0 | 0.00333 | 0.00667 |
| 30.0 | 0.00250 | 0.00750 |

10秒後の瞬間の消費速度は、v10=10.0×(0.00500)2=0.000250 mol/(L·s)。初速度0.00100の1/4です。一方、最初の10秒間の平均消費速度は、(0.0100−0.00500)/10.0=0.000500 mol/(L·s)です。曲線のその時刻の傾きと、区間の始点・終点を結んだ傾きは分けます。
5.濃度から時間を逆算し、傾きでもkを確かめる
Aが0.00500 mol/Lになる時間を、逆向きに求めてみましょう。逆数の式からtだけを取り出します。
t=(1/[A]t−1/[A]0)/k
=(200−100) L/mol ÷ 10.0 L/(mol·s)
=10.0 s
先に入れた10秒に戻り、単位も秒になります。濃度が初めより小さいので、その逆数の差は正。kも正なので、得られる時間も正です。

ペンタ10秒後の濃度を、初速度×10秒で引けばよくない?
イコールその計算は10秒間ずっと初速度だと仮定しています。Aが減ると二次の消費速度も下がるので、今回は積分した式で求めます。初速度×10秒ならAが0になってしまい、0.00500 mol/Lという結果と違います。
ペンタ計算結果が合っているかは、逆算だけで十分?
イコール逆算に加えて、Aが初めより減ること、Bがその分増えて和が保たれること、速度式へ戻した瞬間速度が正になること、単位がmol/Lや秒になることも確かめます。符号を落とした誤りや、平均速度との混同を見つけやすくなります。
6.もう一歩:一次反応なら、積分の形が変わる
同じ前提で、実験からv=k1[A]と分かった別の一次反応を考えます。ここでk1と書くのは、二次のkと区別するためです。k1の単位はs−1です。
d[A]/dt=−k1[A]
d[A]/[A]=−k1 dt
∫[A]₀[A](t) (1/C) dC=−k1 ∫0t dτ
ln([A]t/[A]0)=−k1t
[A]t=[A]0e−k₁t
1/Cの積分から、濃度の比の自然対数lnが現れます。比[A]t/[A]0は無次元なので、対数を取れます。指数k1tもs−1×sで無次元です。一次も二次もt=0で初濃度へ戻りますが、時間に対する関数の形は違います。
ただし、反応次数だけで一次と二次のどちらが速いかは決まりません。初濃度・時間尺度・各速度定数の値と単位を確かめて、濃度の変化や速度を比較します。一次のk1と二次のkは単位が違うので、数字の大小だけでは比較できません。反応式から速度式の指数を読み取るには、素反応として扱えるなど追加の根拠が必要です。
理解確認:実験1でAが4分の1になるとき
同じ二次模型、[A]0=0.0100 mol/L、初めの[B]=0、k=10.0 L/(mol·s)を使います。Aが0.00250 mol/Lになる時刻t、同じ時刻の[B]、瞬間消費速度vを求め、濃度の和と符号を確かめてください。
解答と検算
1/[A]t=400 L/mol、1/[A]0=100 L/molです。
t=(400−100) L/mol ÷ 10.0 L/(mol·s)=30.0 s
[B]=0.0100−0.00250=0.00750 mol/L
v=10.0×(0.00250)2=0.0000625 mol/(L·s)
濃度の和は0.00250+0.00750=0.0100 mol/Lで初めと同じ。瞬間速度vは正ですが、d[A]/dt=−vは負です。Aの濃度は初めの1/4なので、二次の速度は初速度の(1/4)2=1/16。0.00100/16=0.0000625 mol/(L·s)でも確かめられます。時刻30.0 sを濃度の式へ戻すと、0.0100/(1+10.0×0.0100×30.0)=0.00250 mol/Lで、図6・図7とも一致します。
まとめ
速度式はその時刻の濃度と速度を結び、積分形は初濃度から時刻tの濃度を求めます。同じ二次模型で初速度比→n=2→k=10.0 L/(mol·s)→10秒後の濃度→時刻の逆算までつながりました。
計算では、速度の負号、濃度と時間の単位、初期条件、AとBの量の対応を確かめます。反応式の係数と実験で決める次数は、別の問いに答える数です。
出典
- OpenStax Chemistry 2e 12.1:濃度変化率、符号と化学量論係数。
- 同12.3:実験で決める次数、初速度法、速度定数の単位。
- 同12.4:一次・二次の積分形と、濃度からの時間計算。


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