幅1.20 nmの箱と、半分の幅0.600 nmの箱に、それぞれ電子一個があります。どちらも低い状態n=1からn=2へ移る光を吸収するとき、光子の真空波長はそれぞれ何nmでしょうか。
一次元無限井戸の模型で計算すると、約1583 nmと約396 nmです。幅が半分になると準位差が4倍になり、光子の波長は1/4になります。箱の幅Lから準位の差ΔEを求め、ΔEに合う光子の波長λへ進みます。
電子一個が動く一次元無限井戸。内部のポテンシャル0、箱の外では無限大。
別々に固定した幅:L = 1.20 nm、0.600 nm。
共通:電子質量me、初めはn=1、終わりはn=2。
この1→2の電気双極子遷移は許容される。求める量は吸収位置に対応する光子の真空波長λ。
1 nm = 10−9 m。

1.幅Lと状態番号nを、エネルギーの与件へ対応させる
一個の電子がx方向だけに動き、0<x<Lの中に閉じ込められる一次元無限井戸を考えます。内部のポテンシャルエネルギーを0とし、外へ出るには無限のエネルギーが必要という境界です。ここでLは電子が動ける箱の幅です。
幅L=1.20 nmの箱と、L=0.600 nmの箱を、それぞれ固定した別の模型として比較します。各箱で、低い状態n=1から高い状態n=2へ光を吸収して移る場合を考え、初めに電子はn=1にあるとします。
比較する幅:1.20 nm と 0.600 nm
どちらも同じ n=1 → n=2 の遷移
1 nm = 10−9 m
2.初めと終わりの準位を計算し、差を取る
この井戸のエネルギーは、En=n²h²/(8meL²)です。n=1,2,3,…は許される状態を低い順に数える量子数で、hはプランク定数です。n=2だから電子が2個ある、という意味ではありません。今回は電子は一個のまま、状態が変わります。
E2 = 4h²/(8meL²) = 4E1
ΔE = E2 − E1 = 3h²/(8meL²) = 3E1
吸収する光子が埋めるのは、基準0からE₂までの高さではなく、今いるE₁からE₂への差です。E₂=4E₁でも、必要な差は4E₁−E₁=3E₁になります。

ペンタn=2は、電子が二つ入った状態?
イコール状態の番号です。一個の電子でもn=1やn=2などの状態を取れます。今回の遷移は、その一個の電子の状態を変えます。
ペンタn=2の高さが4E₁なら、光子も4E₁を持てばよい?
イコール初めに電子はE₁を持っています。光子が足すのはE₂−E₁なので3E₁です。前のエネルギーを引く操作が必要です。
3.Lをmで代入し、準位差をJとeVで答える
電子の質量、h、遷移の番号1→2は両方の箱で同じです。ΔEの比では、それらが打ち消し合い、残るのはL²の逆比です。分母にL²があるので、幅が1/2になると差は(1/2)の二乗の逆数です。
= L広い箱²/L狭い箱²
= (1.20/0.600)²
= 4
数値も計算します。h=6.62607015×10−34 J s、me=9.1093837139×10−31 kgを使い、Lをmで入れます。電子質量はNISTの2022 CODATA推奨値の中心値で、誤差のない定義値ではありません。この教材の丸めた結果には、その精密な不確かさより、与えた箱の幅の桁数が効きます。
ΔE = 3h²/(8meL²)
≈ 1.25514×10−19 J
1 eV = 1.602176634×10−19 J より
ΔE ≈ 0.783 eV
狭い箱:L = 0.600×10−9 m
ΔE ≈ 5.02056×10−19 J
ΔE ≈ 3.13 eV
h²/(mL²)の単位は、(J s)²/(kg m²)です。J=kg m²/s²を使うとJが残り、エネルギーになっています。eVもエネルギーの単位で、JからeVへは上の「1 eV当たりのJ」で割ります。

4.ΔEに合う光子の波長を求める
光子のエネルギーはE光子=hc/λです。cは真空中の光速、λ(ラムダ)は光子の真空波長で、箱の幅Lとは別の長さです。吸収のエネルギーがΔEに合うとき、λ=hc/ΔEと求めます。
= ΔE広い箱/ΔE狭い箱
= 1/4
真空中の光速c=299792458 m/sを使い、ΔEをJで入れれば、λの単位は(J s)(m/s)/J=mです。その後1 m=10⁹ nmで換算します。hcをJ mで計算したまま、ΔEだけeVの数値で割らないようにします。
≈ 1.58265×10−6 m = 約1583 nm
狭い箱:λ ≈ 3.95663×10−7 m = 約396 nm

ペンタ箱を半分にしたから、光の波長も半分だと思った。
イコール途中に準位差があります。差は箱の幅の二乗の逆数で4倍になり、光子の波長はその差の逆数なので1/4です。Lとλを直接同じ倍率にはしません。
ペンタ同じ1→2だから、狭い箱でも同じ色の光でよい?
イコール番号が同じでも、準位差はLで変わります。今回の模型では約1583 nmから約396 nmへ変わるので、共鳴する光子のエネルギーも波長も違います。
幅1.20 nm:ΔE ≈ 1.25514×10−19 J(0.783 eV)→ λ ≈ 1583 nm。
幅0.600 nm:ΔE ≈ 5.02056×10−19 J(3.13 eV)→ λ ≈ 396 nm。
同じ1→2遷移で、ΔEは4倍、λは1/4。途中の比の検算には丸める前の値を使う。
計算したλから、元のΔEと幅Lへ戻して検算できます。1→2ではΔE=3h²/(8meL²)なので、hc/λを代入してLを取り出します。
ΔE = hc/λ。
L² = 3hλ/(8mec) → L = √{3hλ/(8mec)}。
狭い箱の丸め前λ ≈ 3.9566251…×10−7 mを使うと、
ΔE ≈ 5.02056×10−19 J、L ≈ 6.00×10−10 m = 0.600 nm。
広い箱のλでもL = 1.20 nmへ戻る。
平方根の中の単位は(J s)×m/{kg×(m/s)}=m²なので、取り出したLは長さです。正の幅を求めるため正の平方根を選びます。この逆算では、電子質量と1→2という遷移番号を保っています。
5.吸収位置を使うとき、遷移と初めの状態を確認する
準位差があれば、どんな二状態間でも同じように光を吸収できるとは限りません。電気双極子による遷移では、状態間のつながりを表す量も必要です。今回の無限井戸の1→2はこの量が0にならず、許容される遷移です。さらに初めのn=1に電子がいる条件を置きました。計算したのは吸収位置で、強さは求めていません。
この井戸は、分子の電子と光の関係を考えるための単純な模型です。実在する共役分子の吸収波長を、この幅Lだけから精密に決めるものではありません。ここで確かめたのは、同じ電子質量・同じ井戸模型・同じ遷移番号という条件での、ΔE∝L−2とλ∝L²の関係です。
6.演習:遷移番号と箱の幅を変えて検算する
問1 L=1.20 nmのまま、初めにn=2にある電子の2→3吸収を考えます。この遷移を吸収できる条件で、ΔEはE₁の何倍、光子波長は1→2の場合の何倍ですか。
ΔE2→3/ΔE1→2 = 5/3
λ2→3/λ1→2 = 3/5
λ2→3 ≈ 1582.65 × 3/5 ≈ 950 nm
解答1 高い準位の9E₁をそのまま使わず、初めの4E₁を引きます。幅が同じでも遷移の番号を変えれば差も変わり、波長も変わります。1→2と2→3の初めの状態が違うことも、吸収条件に含めます。
問2 元の1→2のまま箱の幅を2倍にしたら、ΔEとλはどうなりますか。
解答2 ΔEは1/2²=1/4倍、λは4倍です。幅を狭くしたときと向きが逆になり、「狭い箱ほど大きい差・短い波長」という関係を検算できます。
参考資料
OpenStax, University Physics Volume 3 §7.4:一次元無限井戸、準位の式と差。数値条件と図・演習は本稿で設定し、井戸の波動関数から1→2の電気双極子行列要素が0でないことを確認しています。
NIST, 2022 CODATA Fundamental Physical Constants:h、光速、電子質量、eVとJの換算。h、光速、電気素量は定義により正確な値、電子質量は推奨された測定値です。

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