原子がイオンになると何が変わる? 電子配置と周期表の読み方

閉じた食塩の瓶を虫眼鏡で見るペンタと、ノートを指すイコール 化学
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食塩の主成分は塩化ナトリウムです。その結晶には、ナトリウムイオンNa+と塩化物イオンCl−が並んでいます。NaやClという原子の記号に「+」「−」が付くと、何が変わるのでしょう。まず陽子と電子を数え、それから電子配置と周期表をつなげます。

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食塩の粒を拡大するだけでは、電子数は数えられません。原子番号と電荷を手掛かりに考えます。

1.原子番号は、何の数?

原子には、中心の原子核と、その周りにある電子があります。原子核の中の陽子は正の電荷、中性子は電荷0、電子は負の電荷を持ちます。陽子1個の正の電荷と電子1個の負の電荷は、大きさが等しく、符号が逆です。

原子番号は陽子の数です。ナトリウムNaの原子番号は11、塩素Clは17。陽子が11個ならNa、17個ならClです。電気的に中性の原子では、陽子と電子の数が等しくなります。

Na原子:陽子11個、電子11個 → 電荷0
Cl原子:陽子17個、電子17個 → 電荷0
ペンタ

Naの原子番号11は、電子11個という意味じゃないの?

イコール

定義は陽子の数です。中性のNa原子では、電子数も11個になります。でも電子が変わってイオンになっても、陽子が11個なら原子番号は11のままです。

ここから扱うイオン化は、電子を失う・受け取る変化です。原子核の陽子数を変える変化ではありません。原子番号と電荷:OpenStax Chemistry §2.3。

2.Na⁺の「+」を、数で確かめる

Na原子が電子を1個失うと、陽子は11個、電子は10個になります。正の電荷が1個分多く残るため、Na+です。正の電荷を持つイオンを陽イオンと呼びます。

電子数:11 − 1 = 10個
正負の差:陽子11個 − 電子10個
= +1 → Na+

この+1は、陽子1個の電荷の大きさを単位にした数です。その大きさを電気素量eと呼べば、Na+の電荷は+eです。電荷+1を「1 C」と読むわけではありません。1個の電子の電荷は−eです。

ペンタ

プラスになるなら、プラスの粒子が一つ増えたのかな?

イコール

今回は陽子は増えていません。マイナスの電子が一つ減ったので、正負が打ち消しきれなくなりました。Naの右上の+には、1を省略して書いています。

3.Cl⁻は、電子を一つ受け取る

Cl原子が電子を1個受け取ると、陽子は17個、電子は18個になります。電子の負の電荷が1個分多いのでCl−、電荷は−eです。負の電荷を持つイオンを陰イオンと呼びます。Cl−は塩化物イオンという名前です。

電子数:17 + 1 = 18個
正負の差:陽子17個 − 電子18個
= −1 → Cl−
ペンタ

Clの電子が18個になったら、原子番号も18に変わる?

イコール

変わりません。陽子は17個のままなので、塩素のイオンです。原子番号18のアルゴンは、陽子が18個ある別の元素です。電子数だけで元素の名前は決められません。

電荷から電子数へ戻るには、陽子数−電子数の差を使います。2+なら陽子が電子より2個多い、2−なら電子が陽子より2個多い、と読みます。符号と、差の個数を別々に確かめるのがコツです。

4.電子を、殻ごとに分けて数える

ここまでは電子の合計を見ました。次は、電子がどう分かれているかを考えます。電子の状態を大きく分ける電子殻を、内側からK殻、L殻、M殻……と呼びます。電子の分かれ方を表したものが電子配置です。ここでは、最もエネルギーが低い基底状態の配置を使います。

Na原子の11個の電子は、K殻2個、L殻8個、M殻1個と分かれています。内側から2, 8, 1と書けば、合計2 + 8 + 1 = 11個です。この書き方の数字は、原子番号でも電荷でもなく、各殻の電子数です。

Na+では、外側のM殻の1個を失って、2, 8になります。次の図で、点の合計と、陽子数の両方を確かめてください。各行は殻ごとの数を示し、電子の位置や通り道を描いたものではありません。

Na原子は陽子11個、電子K2 L8 M1で合計11個。Na+は陽子11個、電子K2 L8 M0で合計10個、電荷+1
上から下へ、電子が11個から10個になります。陽子11個は同じ。Na⁺のM殻には電子がありません。
ペンタ

Na⁺では、今いちばん外にある電子はL殻の8個だね。Na原子の外側の1個とは違う。

イコール

はい。「今ある電子のいちばん外側」と、「中性の原子で外側にあった電子」を分けて読みます。まず原子なのかイオンなのかを確かめてから、電子配置を数えましょう。

Cl原子は2, 8, 7で、合計17個です。Cl−では、M殻へ電子が1個加わり、2, 8, 8で合計18個になります。

Cl原子は陽子17個、電子K2 L8 M7で合計17個。Cl−は陽子17個、電子K2 L8 M8で合計18個、電荷−1
今度は電子が17個から18個へ増えます。陽子17個は変わらず、電荷は−1です。

Na+の2, 8は中性のNe原子と同じ電子配置、Cl−の2, 8, 8は中性のAr原子と同じ電子配置です。ただし、陽子数は異なるので、同じ元素になったわけではありません。基底状態の電子配置:OpenStax Chemistry §6.4。

ペンタ

M殻も、8個で必ず満員なの?

イコール

M殻全体には最大18個入ります。ここでのCl⁻の8個は、M殻の一部まで電子が入った配置です。この例を「どの殻も8個で満員」という規則に広げないでください。殻をさらに細かく分ける軌道は、後で学びます。

5.価電子は、電子の合計とは違う

NaやClのような典型元素では、中性の原子の最も外側の殻にある電子が、結合やイオンの形成に大きく関わります。こうした電子を価電子と呼びます。ここでは中性のNa原子とCl原子を数えます。

Na原子:2, 8, 1 → 価電子1個
Cl原子:2, 8, 7 → 価電子7個

Naは電子11個のうち価電子1個、Clは電子17個のうち価電子7個です。電子の合計と、外側で働く電子の数を区別します。Naが1個失ってNa+になることや、Clが1個受け取ってCl−になることは、外側の配置とつながっています。

ペンタ

価電子7個のClは、7−のイオンになるってこと?

イコール

価電子数とイオンの電荷は違います。Cl原子が電子を1個受け取った結果は、17個の陽子に18個の電子、差が−1のCl⁻です。価電子7個は、変化する前の外側の電子を数えたものです。

電子配置は、よくできるイオンの電荷を考える手掛かりです。ただし「8個になるから、どんな相手や条件でも反応が起きる」とまでは決められません。反応には、相手との結合やエネルギーも関わります。

希ガスの「価電子0個」と「外側に8個」は矛盾する?

高校化学では、結合に関わりにくい希ガスの価電子を0個として扱います。しかし、電子が外側にないという意味ではありません。Neは2, 8、Arは2, 8, 8で、最外殻電子は8個。Heは2で、最外殻電子は2個です。この用語上の扱いを、電子配置そのものと分けます。大学の教材では価電子の定義・数え方が異なる場合があるので、そこで使う定義を確かめます。

6.周期表の縦と横は、何をそろえている?

周期表は、元素を原子番号の順に並べています。縦の列を族、横の行を周期と呼びます。Naは1族・第3周期、Clは17族・第3周期です。

一つ上の第2周期から、LiとFも比べましょう。中性のLi原子は2, 1、F原子は2, 7。LiとNaは1族で外側に1個、FとClは17族で外側に7個、という共通点があります。次の図は、2族から16族を省き、1族と17族だけを取り出したものです。

周期表から1族と17族を抽出。第2周期Liは2,1とFは2,7。第3周期Naは2,8,1とClは2,8,7。原子番号3,9,11,17、価電子1,7,1,7
縦では外側の電子数、横では電子が入っている殻の段数に注目。中間の族を省いているので、LiとFが隣り合う配置ではありません。

LiとNaは、電子を1個失った1価の陽イオンを作りやすい点が似ています。FとClは、電子を1個受け取った1価の陰イオンを作りやすい点が似ています。同じ族で外側の電子配置が似ていることが、化学的性質の共通点につながります。すべての性質が同じ、という意味ではありません。

横にも注目します。第2周期のLiとFはK・L殻を使い、第3周期のNaとClはK・L・M殻を使っています。今回比べた1族・17族の元素では、中性の原子の基底状態で、電子が入る最も外側の殻と周期が対応します。

ペンタ

Na⁺はK・L殻だけだから、第2周期へ移るの?

イコール

周期表でのNaの位置は変わりません。周期表は元素を原子番号で並べたものです。Na⁺も陽子11個のNaなので、1族・第3周期の元素のイオンです。今回比べた1族・17族の殻と周期の対応は、中性の原子の基底状態で考えます。

ここでは1族と17族の典型元素を入口にしました。遷移元素などでは、価電子やイオンの電子配置を数える規則を、さらに詳しく学ぶ必要があります。Naの周期表データ:英国王立化学会、Clの同データ、国内の価電子の説明:進研ゼミ高校講座。

7.Na⁺とCl⁻が並ぶと、電荷はどうなる?

Na+1個とCl−1個を合わせた電荷は、(+1) + (−1) = 0です。塩化ナトリウムの結晶では、これらのイオンが1:1の個数比で多数並び、全体として電気的に中性になります。NaClという化学式は、この個数比を表します。結晶中で、独立したNaCl分子が一つずつあるという意味ではありません。

ペンタ

全体が中性なら、Na⁺とCl⁻も中性の原子に戻った?

イコール

全体の電荷が打ち消されても、Na⁺とCl⁻というイオンとして数えます。Na⁺の電子は10個、Cl⁻は18個です。全体の電荷と、一つの粒子の電荷を分けて考えてください。

一つのNa原子から一つのCl原子へ電子1個が移った、と数の帳尻を考えるなら、電子の合計は11 + 17 = 28個から、10 + 18 = 28個へ変わりません。これは電子数の保存を確かめる数え方です。実際の塩化ナトリウム生成の全反応や、そのエネルギーの説明は別に必要です。イオン結晶と組成比:OpenStax Chemistry §2.6。

8.本文だけで確かめる

問1:Na+の原子番号、陽子数、電子数を答えてください。

答え:原子番号11、陽子11個、電子10個です。11 − 10 = +1となり、電荷と一致します。

問2:Cl−は電子18個です。原子番号18の元素ですか。

答え:違います。Clの陽子は17個なので、原子番号17です。17 − 18 = −1で、塩化物イオンの電荷になります。

問3:原子番号12のMgからできたMg2+は、電子を何個持ちますか。

答え:陽子12個に対し、電子が2個少ないので12 − 2 = 10個です。12 − 10 = +2で検算できます。

問4:中性のCl原子は2, 8, 7です。電子の合計、価電子数、周期をそれぞれ答えてください。

答え:合計は17個、価電子は外側の7個、第3周期です。電子がK・L・Mの3段の殻に入っています。

問5:Na+と中性のNe原子は、どちらも電子10個です。同じ元素ですか。Neの原子番号は10とします。

答え:違います。Na+の陽子は11個、Ne原子は10個。電子配置が同じでも、陽子数が異なれば別の元素です。

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