モル濃度と質量%は何が違う? 同じ食塩水で比べる

同じ食塩水を秤に載せ、質量と液面による体積を見比べるイコールとペンタ 化学

「5%の食塩水」と「0.5 mol/Lの食塩水」。どちらも濃さを表しますが、数字だけを比べても、どちらが濃いかは分かりません。溶けているNaClを何の単位で数え、食塩水全体の何と比べているかが違うからです。

同じ食塩水を秤に載せ、質量と液面による体積を見比べるイコールとペンタ
同じ食塩水でも、全体の質量で比べるか、全体の体積で比べるかで濃度の表し方が変わる。

1.溶質・溶媒・溶液は、どの範囲?

食塩水では、溶けているNaClが溶質、それを溶かしている水が溶媒です。NaClと水を合わせた全体が溶液です。

ここでは純粋なNaCl 5.00 gと水95.00 gから、均一な食塩水100.00 gができたとします。溶け残りやこぼれはなく、できた食塩水全体の体積は、ある一定の温度で96.50 mLだったとします。これらは計算のために与えた値で、実測した食塩水の物性値ではありません。

NaCl5.00 gと水95.00 gを合わせた食塩水100.00 gを全体として囲み、その全体の体積を96.50 mLとする
質量%で割る相手は、NaClも水も含む食塩水全体。
ペンタ

水が95.00 gなら、NaCl 5.00 gを95.00 gで割るんじゃないの?

イコール

質量%では、溶液全体100.00 gと比べます。溶質5.00 gは、その全体の中に含まれている量です。

ペンタ

食塩水100 gのうち、食塩は何gかを見るんだね。

イコール

はい。この例なら100.00 gの食塩水中に5.00 gのNaClがあります。水だけを分母にすると、別の比を計算することになります。

2.質量%は「全体の何%が溶質か」

質量パーセント濃度は、溶質の質量を溶液全体の質量で割り、百分率で表したものです。分数の上側がNaCl、下側が食塩水全体になっているかを確かめます。

質量パーセント濃度
= 溶質の質量溶液全体の質量 × 100%

= 5.00 g100.00 g × 100%
= 5.00%

同じgどうしを割るので、質量の単位は打ち消し合います。質量の比そのものを質量分率 wと呼び、この例ではw = 0.0500です。0.0500を百分率で表すと5.00%になります。式の「×100%」は、割合を%で表示する操作です。

例えば、この均一な食塩水を20.0 g取り分ければ、含まれるNaClは20.0 g × 0.0500 = 1.00 gです。5.00%は「どんな量を取ってもNaClが5.00 g」という意味ではありません。

3.モル濃度は「溶液1 Lあたり何molか」

モル濃度 cでは、溶質の量をmolで表し、溶液全体の体積と比べます。c = n/Vのnは溶質の物質量、Vはできた溶液全体の体積です。VをLで入れると、cの単位はmol/Lになります。

まずNaClの5.00 gをmolへ直します。モル質量58.44 g/molを使い、途中の計算値を丸めずに持っておきます。

NaClの物質量 n
= 5.00 g ÷(58.44 g/mol)
= 0.085557… mol

食塩水全体の体積 V
= 96.50 mL ÷ 1000
= 0.09650 L

モル濃度 c = nV
= 0.085557… mol0.09650 L
≈ 0.887 mol/L

0.887 mol/Lは、この食塩水と同じ濃さの溶液1 Lあたりに、NaClが約0.887 mol含まれるという意味です。今回あるのは96.50 mLなので、含まれるNaClは約0.0856 molです。濃度の値と、手元の試料に含まれる量を分けて読みます。

同じ食塩水の質量%はNaCl5.00 gを全体100.00 gで割って100%を掛け5.00%。モル濃度はNaCl約0.0856 molを全体0.09650 Lで割り約0.887 mol/L
同じ試料を比較する。両方とも上側が溶質、下側が溶液全体だが、比べる量と単位が違う。
ペンタ

水95.00 gを95.00 mLとして、それで割ってもいい?

イコール

ここで必要なのは、水だけの体積ではなく、NaClを溶かした後の食塩水全体の体積です。この例で与えた96.50 mLを使います。

ペンタ

NaClの体積と水の体積を足せば、できた食塩水の体積になりそうだけど。

イコール

混ざると粒子の間の配置が変わるため、混合前の体積の和と混合後の体積は、一般には一致しません。溶液の体積は、溶かした後の値を使います。

4.質量%をmol/Lへ換算するには密度が必要

質量%からは、例えば溶液100 g中のNaClの質量を求められます。しかし、モル濃度の分母はLです。溶液のgをLへつなぐ情報として、溶液の密度が必要になります。密度ρは、溶液全体の質量を全体の体積で割った値です。

この食塩水の密度 ρ
= 100.00 g ÷ 96.50 mL
≈ 1.036 g/mL

この密度なら、同じ濃さの食塩水1 L = 1000 mLは約1036 gです。その5.00%がNaClなので、NaClは約51.8 g。これを58.44 g/molで割ると約0.887 molです。1 L中の量なので、先ほどの約0.887 mol/Lに戻ります。途中の数は表示上の近似値で、計算は丸め前の値で行います。

密度は溶質の種類・濃度・温度に応じて変わります。換算には、その溶液と温度に対応した密度を使います。密度の情報がない質量%を、g = mLと決めて正確にmol/Lへ換算することはできません。

5.同じ濃度なら、容器が違っても量は同じ?

均一な食塩水を半分だけ取り分けると、NaClの量も溶液の質量も体積も半分になります。分数の上下が同じ割合で減るので、濃度は変わりません。

元の食塩水96.50 mL中のNaClは約0.0856 mol。半分の48.25 mL中では約0.0428 mol。濃度はいずれも約0.887 mol/L
濃度が同じでも、手元に含まれるNaClの量は体積によって違う。
ペンタ

小さい容器へ移しても、濃くならないんだね。

イコール

均一な溶液の一部を取り分けただけなら、溶質と溶液全体の比は同じです。元の量の半分を取れば、NaClも半分になります。

ペンタ

NaClの量を知りたいなら、濃度だけでなく、何mLあるかも要る?

イコール

はい。n = cVで、濃度とその溶液の体積を掛けます。mol/LにLを掛ければ、NaClの物質量molが求まります。

6.質量モル濃度は「溶媒1 kgあたり」

もう一つ、名前が似ている質量モル濃度 bがあります。上側は溶質のmolですが、下側は溶媒だけの質量をkgで表した値です。今回の水は95.00 g = 0.09500 kgなので、次の値になります。

質量モル濃度 b
= NaCl 0.085557… mol水0.09500 kg
≈ 0.901 mol/kg

モル濃度の下側は溶液全体のL、質量モル濃度の下側は溶媒だけのkgです。同じ食塩水でも、約0.887 mol/Lと約0.901 mol/kgは単位も意味も違います。名前を暗記する前に、分母が何を含むかを書いて確かめましょう。

7.理解を確かめる3問

① NaCl 10.0 gを水90.0 gにすべて溶かした。質量パーセント濃度は?
解答:溶液全体は100.0 g。10.0/100.0 × 100% = 10.0%です。水90.0 gだけで割りません。

② 0.200 mol/Lの均一なNaCl水溶液25.0 mL中に、NaClは何molある?
解答:25.0 mL = 0.0250 L。n = cV = 0.200 × 0.0250 = 0.00500 molです。

③ NaClの質量パーセント濃度とモル質量が分かれば、mol/Lも決まる?
解答:正確な換算にはその温度での溶液の密度も必要です。質量%から溶質の質量を、モル質量からmolを求められますが、分母の溶液質量gを溶液体積Lへ直す情報が足りません。

参考資料

濃度・質量分率・質量モル濃度の定義はIUPAC Green Book第3版(2012年第2刷)§2.10、冊子47–48ページを参照。モル濃度と質量%はOpenStax Chemistry 2e §3.3・§3.4でも確認できます。国内教材の用語と密度を使う換算の例は啓林館副教材見本「酸・塩基の中和」冊子58ページ、問題151を参照しています。問題文・図は本記事用に作成しました。

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